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イン・タイム ドーナル・ラニー
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イン・タイム ドーナル・ラニーの作品紹介

イン・タイム ドーナル・ラニーのあらすじ

アイリッシュ・ミュージックの第⼀⼈者として活躍してきたドーナル・ラニーの半⽣を、彼⾃⾝の⾔葉や⾳楽仲間の証⾔、ライブ映像などによって多⾓的に明らかにするドキュメンタリー。1960年代から多くのバンドを組み、様々なミュージシャンとコラボレーションする中でも⼀貫して失わない祖国の⾳楽シーンへの思い、⽇本との深いつながり、そしてある悲劇を克服して今に⾄るラニーのインスピレーションの源を探る旅。

イン・タイム ドーナル・ラニーの監督

ヌアラ・オコーナー

イン・タイム ドーナル・ラニーの出演者

ドーナル・ラニー

クリスティ・ムーア

パディ・グラッキン

原題
In Time: Dónal Lunny
製作年
2025年
製作国・地域
アイルランド
上映時間
95分
ジャンル
ドキュメンタリー音楽

『イン・タイム ドーナル・ラニー』に投稿された感想・評価

3.8
ドーナル・ラニーを静かに語る美しい風景と素晴らしい音楽のドキュメンタリー
アイルランド語はやはり聞き取れないが歌によく似合う
ピーター・バラカン氏の解説がとても良く勉強になった
またこの映画は9月のMusic Film Festivalで再上映されるそう
20世紀アイルランド音楽の革新の最大の立役者にもかかわらずほぼ一貫して裏方に徹しつづけたドーナル・ラニーのドキュメンタリー。プランクシティ、ボシーバンド、ムーヴィングハーツ、クールフィン、モザイクといったバンド、また並行する数多くのプロデュース業などの重要な業績をバイオグラフィックにまとめるのは難しくなさそうだがそうはせず、あくまでドーナル自身の創作哲学に、彼のインスピレーションの源であるアイルランドの美しい白黒の風景とともに迫っていく。往年の音源とともに現在の近しいミュージシャンたちとのセッションや彼らの独奏にも贅沢に時間を割いてたっぷり堪能させてくれるし(Pauline Scanlonの歌は素晴らしかった)、ゲール語の詩の朗読が織り交ぜられているのも信頼がおける。ドーナルほど人柄とスタイルが密接に結びついた人のドキュメンタリーとしては最適の形式だと思う。かといって情報として不十分かというと全くそんなことはなく、いくつもの新たな発見もあった。ドラムの導入についてのドーナルの考えやブズーキのオープンコードがアイルランド音楽に何をもたらしたかといった証言をドーナル自身の口から聞けるのは貴重。特に面白いのはプランクシティが当時のヨーロッパで熱狂的に受け入れられ、それに呼応して各国から自国の伝統音楽をクールなものとして再評価する動きが現れたということ。ドイツのレコード屋ではプランクシティのアルバムがピンクフロイドやドアーズと一緒に並べられていたそう。後年トランスアトランティックかつ汎ヨーロッパ的音楽を追求していくドーナルの関心を考えると、すでに70年代にそうした傾向の萌芽をドーナル自身が引き起こしていたことは感慨深い。あと意外にもドーナルラニーの女性関係がそのへんのロックスターなど比較にならないほどだらしないということも新発見だった。

【アフタートークメモ】

・映画『In Time』はドーナル自身の意向がかなり入った作品。バイオグラフィーやディスコグラフィーを追いかけるつくりにはしたくない、とはドーナル自身のかなり強い要望だったそう。製作のヌーラ・オコナーらハミングバード・プロダクションは90年代の歴史的TVプロジェクト『Bringing it all that home』や『スルト』、『Other Voices』なども手がけた、ドーナルとは気心の知れたチーム。このチームに依頼した(それもTVではなく映画を希望した)のには、ドーナルが誰にも語ることのできなかった息子の死について語りたいと願ったからではないか。プロデュースにはトラッドに関心の深いU2のアダム・クレイトンが名を連ねる。

・ドーナルラニーの功績を一言で言えば「アイルランド伝統音楽をかっこいいものにした」。日本では89年のチーフタンズ初来日がアイルランド音楽の最初の上陸だったこともあり、モダンアイリッシュはグループが入り口になりがちだが、この映画を見るとアイルランド音楽は本来はアンサンブル音楽ではなく、楽器一本の独奏+歌が基本単位であることがわかる。それを踏まえるとロックバンドのフォーマットを応用したドーナルの功績がどれほどのものだったかがわかる。

・ドーナルラニーはとにかく飽きが早い。一般的にバンドのクリエイティビティは最初の4年で決まり、そのあとはお金のために活動することになるが、ドーナルは音楽の目的が音楽自体でなくなるとすぐに関心を失って新たなバンドに移行する。80年代のドーナルはバンドとしての活動は目立たないが、その間にメアリー・ブラックをはじめ夥しいプロデュースを手がけていた。

・アンディ・アーヴァインがブルガリアなどの複雑なリズムを持ち帰ってきた。それに食いついたのがドーナルで、そこから東欧リズムがアイルランド音楽業界でひとつのブームになる。この流れの中からビル・ウィーランの『East Wind』が生まれ、のちの『Riverdance』に結実していく。

・90年代のドーナルのバンド、Coolfinは本当にかっこよかった。特にすごかったのはレイ・フィンのドラム。伝統音楽に四角いドラムを入れて台無しにした例は世界中枚挙にいとまがないが、それに対してレイ・フィンの複雑で細やかな手つきは変拍子を多用するドーナルの呼吸とぴたりと一致している。(そう言われてクールフィン聞き直したが、確かにこのドラムはすごい。バウロンのように軽々としなやかに、演奏のうねりに合わせて流れては止まる手つきはもはやひとつの伝統楽器。どの曲もいいが「Butlers」が白眉か)