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内なる傷痕のpikaのレビュー・感想・評価

内なる傷痕(1970年製作の映画)
3.5
シンプルなカメラワークの中に自身のセンスを全部ぶち込んで音楽で引き立てるってところや、山並みの雰囲気、動物のアイコン的な使い方にパラジャーノフとのアプローチの近さを感じつつ、自然の中なのにこの無機質っぷりが見事過ぎて心踊る。

「ジャン・コクトーの直系を受け継いでいる作家はフィリップ・ガレル」と聞いても「愛の残像」にしかその一端を感じられてなかったんだけど、ボカシ下手くそか!な全裸ガレルが登場した後半から「オルフェの遺言」の系譜を脈々と感じた。
神秘的でありながら生々しくも人間臭い感情が漂う映像や、多幸感が湧きあがってしまうようなユーモアさすら滲み出る個性的な演出が最高。
ガレルの役は神なのかなぁ、とか意味はよくわかんないんだけど映像のインパクトがハンパなく強烈で、役者の存在感やロケ地含め完璧なまでに演出された画面内をバキッと切り取るカメラワークが素晴らしく見事。
解釈なんて言語化する前にこの「映画」そのものを浴びろ!と言わんばかりに気持ち良い。

ガレルが前を向くたびにボカシのせいで画面全体がボヤッと薄暗くなるので、気になって気になって「こっち向くな!」と何度も思ってしまうんで、あんなんなるくらいなら草とかつけるとか何か方法なかったんでしょうか。(^◇^;)
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