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悪魔とダニエル・ジョンストンのdojiのレビュー・感想・評価

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観終わったときに思うのは、恥ずかしいぐらいにぼくはダニエル・ジョンストンを神格化していて、ある種病める天才としてのストーリーをあたまの中で膨らましてしまっていたのだなということだった。

この映画の中の若きダニエルはおどろくほど健康的でユーモアがあり、笑顔が爽やかな青年としてとにかく魅力的だった。それらの映像をアーカイブとしてまとめているだけでもこの映画は観る価値があるし、後の転落についても彼の姿の変化ととともに描かれ、彼のストーリーはそのまま観るものに訴えかけてくる。

ただ、この映画はいくらなんでもダニエルに頼りすぎではないだろうか?再現シーンのあの主観カメラの演習は決してスマートとは言えないし、彼の音楽がいかに歪なフォーマットをとりながら、途方もなく透き通った愛に溢れていたことを、この映画はただ過去の映像をまとめるだけで、強く訴えようとする意思をあまり感じない。

それでも観客はそこにダニエルのすばらしさを感じて余りあるのだけれど、映画としての仕上がりはあまり高いものとは言えないと思う。こんなことを書きながらも十分感動はしたし、ダニエルのストーリーに演出や解釈など必要ないのかもしれないとは思いながらも、なんというか、映画として彼をもっと愛そうよとか、そんなことも思ったりしてしまった。
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