藻尾井逞育

怪談かさねが渕の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

怪談かさねが渕(1957年製作の映画)
4.0
「わかった。私ゃ、わかった。おのれ、新吉、よくもこの私を親子二代に渡って、だましたな」
「新吉、狂ったな。全ては因果応報の理というものだ。ついでにてめぇも冥土に行ったらどうだい?」

旗本・深見新左衛門による盲目の金貸し・宗悦殺しに端を発し、時間を下ってその因果応報で、それぞれの子供である新吉、豊志賀が陰惨この上ない運命をたどることになる。

三遊亭圓朝の処女作といわれる「真景累ヶ淵」を原作とする本作は、まさしくJホラーの古典的名作だと思います。また豊志賀の若杉嘉津子、お久の北沢典子が登場したり、原作にはない丹波哲郎扮する"色悪"な素浪人大村を登場させることで、中川信夫監督の後の傑作「東海道四谷怪談」へと繋がっていく重要な作品といえます。すでにこの作品でも中川監督のセンスは冴え渡り、かんざしを落としてゆらゆら揺れる水鏡がおさまると豊志賀の崩れた顔が初めて現れるシーンは本当にゾクゾクしますね。
この作品での豊志賀の若杉嘉津子さんは大変美しく、それでいてものすごく艶やかです。そんな女性が若い女性に嫉妬して、年上の女の情念をこれでもかと凄まじいまでに見せつけますので、まるで男女の痴話話だったかと、一瞬、因果応報という映画の主題を忘れてしまうほどでした⁈