藻尾井逞育

屍憶 SHIOKUの藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

屍憶 SHIOKU(2015年製作の映画)
4.0
「いいですか、すべての出来事には理由があります。お気をつけて」
「私たちは永遠に一緒になるのよ」

恋人との結婚を間近に控えて幸せな日々を送っている青年ハオ。彼はある日ジョギングへと出かけると、公園の木の根元に挟まっている赤い封筒を見つける。封筒を手に取ったハオは、その日から悪夢や怪奇現象に悩まされることになってしまう。気の休まらない日々が続くハオは、自身に起きていることについて相談するため霊媒師の元へと向かう。すると、そこで悪霊が取り憑いているという衝撃的な事実を告げられる。

道端で赤い封筒を拾った者は死者と強制的に結婚させられてしまう、という台湾の風習“冥婚”をモチーフにした日台合作ホラーです。身近な風景の中で展開し迫り来る恐怖、そこにはJホラーのじめっとした雰囲気が思いっきり感じられます。
Jホラーで手慣れたスタッフであるため、かえってあまりに話を詰め込み過ぎたような印象もあります。主人公の冥婚が偶然赤い封筒を拾ったために不条理にも行われたのか、それともすでに冥婚は前世から決まっており赤い封筒を拾ったことは単なる開始の合図なのか、そのあたりがブレてしまった点が少し残念でした。それでも、話は二つの異なるストーリーがそれぞれ関係なく別々に同時進行していき、最後にお互いが関係していくという、とても緻密に作り込まれた脚本であることがわかります。最後まで謎解きミステリーとしても楽しむことができました!
台湾でも大人気の田中千絵さん、最初どの役かわからなかったのですが、今回は難しい役どころを上手く演じていましたね。彼女のためにもう一回冥婚やらなければいけなかったりして⁈
映画の最後に、冥婚の説明で現在でもアジアを中心に日本にも存在するとありました。山形県村山地方の若松寺などに伝わる「ムカサリ絵馬」なんかはあの世の幸せを願う死者の結婚式ということで近いものであるかもしれません。仏教は本来、現世からの解脱を目指す面がありますが、そんな教義を超えたところで、現世でかなえられなかった幸せをあの世でかなえてほしいという人々の思いに対して優しく受け皿になってもいたようです。ただし奉納するにあたっては、いくつか禁忌、タブーもあるとのこと。コワ〜⁈

2024/04/03
台湾加油!