藻尾井逞育

南風の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

南風(2014年製作の映画)
3.5
「迷ったのか?心の赴くままに進みなさい。流れに身を任せるがいい。人生は旅だ。目的などない」
「だけど今は自転車をこぎ続ける。おかしな大人になるのも悪くないと思う。かなわない夢はない。走り出せばそこに仲間がいる。旅はそこから始まる」

26歳の雑誌編集者・風間藍子は、失恋したうえファッション担当も外される。さらに企画ページに飛ばされ台湾のサイクリング・イベントの取材に行く羽目に。レンタサイクル店で出会ったモデル志願の女子高生トントンがガイドをかって出て、二人で日月潭へ向かってこぎ出すが、前途多難⁈

行き詰まったヒロインが、企画の為いやいや出かけた台湾サイクリングの旅。台湾一周(約900km)する環島などサイクリングの盛んな台湾らしく、台北を出発後、観光地を巡りながら中部の日月潭で行われるサイクリング・イベントを取材するために自転車で旅するという設定です。このコースでほぼ台湾を4分の1周します⁈
映画では、途中、タロイモのかき氷や素腰花など台湾グルメを紹介したり、映画「悲情城市」のロケ地としても有名な九份をはじめ、映画「言えない秘密」のジェイ・チョウの学生時代の思い出の地、台湾のヴェニス淡水など観光スポットをいくつも巡ります。途中訪れる龍騰断橋は、日本統治時代に台湾縦貫線が開通した時に造られたレンガ製のアーチ橋でしたが、二度の大地震の被害をうけて現在の姿になったそうです。崩れたとはいえ、現在でもなお圧倒的な存在感を誇っています。ここで「(日本人と台湾人は)家族みたいな関係だ」という言葉が語られます。今回の能登半島地震でも真っ先に私たちのことを心配してくれた仲間がいるということは、本当にありがたいですよね。
自転車でのロードムービー。歩きでも車の速さでもない、心地よい風を全身で受けるのにちょうどいい速さで懐かしい台湾の風景の中を進んでいきます。最初ヒロインは仕事もプライベートも崖っぷち、やたらツンケンして自分のまわりに壁をつくり周りが見えてません。それが今回のサイクリングを通じて、だんだんと心のわだかまりが解け、仲間たちが加わるにつれ、まわりにも優しくなっていきます。そして一年後、舞台を愛媛松山、しまなみ海道へ移すと、イヤイヤ始めたサイクリング企画からサイクリングのライターへと転身し、自分からサイクリング仲間に飛び込んでみせます。私も人生が変わるようなサイクリング、してみたい!

2024/04/03
台湾加油!