藻尾井逞育

あやしい彼女の藻尾井逞育のレビュー・感想・評価

あやしい彼女(2016年製作の映画)
4.0
「ローマで恋に落ちたお姫様も、人生の休日だって割り切ったんだ。私の休日も終わったのさ」
「私は何度生まれ変わっても、寸分違わずこの人生を生きるよ。そしたらまたお前のお母さんになれる」

ひょんなことから20歳の姿になってしまった73歳の瀬山カツ。失われた青春を取り戻すため、大好きな歌を歌い、淡い恋に胸をときめかせ新たな人生をスタートさせるが……。

「あやしい彼女」、日本版リメイクです。中国版、韓国オリジナル版、ベトナム版ときて、四番目の鑑賞です。同じような話を立て続けに四つも鑑賞してさすがに飽きないかなとも思いましたが、こちら日本版も十分に楽しめました。他のバージョンとは異なり、日本版ではお婆ちゃんの子供が息子ではなく娘になっています。そのおかげで他のバージョンにある嫁姑問題がなくなり、テーマが親子の愛情、とりわけ母親の愛情により大きくシフトして、かえってスッキリしています。恋の終わり方も最後の写真のシーンは消しゴムマジック、他のバージョンと比べてファンタジックです。
また日本版は、韓国オリジナル版以上にオードリー・ヘップバーンと「ローマの休日」へのオマージュが強く感じられます。私ももちろん、日本人ってみんなオードリーに恋しているんですね⁈オードリーのヘアスタイルやファッションを身につけた多部未華子さんもとても可愛らしく魅力的です。
もともと演技力のある女優さんですが、この映画では特に多部未華子さんの歌唱力に圧倒されます。昭和歌謡曲を現代風にアレンジした楽曲、とりわけ「悲しくてやりきれない」はお婆ちゃんの苦しかった過去とオーバーラップして胸を打ちます。そしてこの映画の主題歌、anderlustの「帰り道」のパフォーマンスでは、彼女は本職のミュージシャンのようで迫力があり圧巻です!思わず、Apple musicで多部未華子って検索しちゃいました⁈
このanderlustの実のヴォーカル、越野アンナさんが、この映画のバンド「あやしい彼女」の二代目ヴォーカルとして、北村匠海さんと一緒にステージでパフォーマンスされてますね。越野アンナさんといえば、音楽プロデューサー小林武史さんとMy Little Loverのakkoさん、二人のDNAを受け継ぐミュージシャンです。演奏シーンで「いい曲だねぇ。あの才能は私に似たんだね」という台詞がありますが、まさにその通り、サビの高音パートなんて母親のakkoさんそのままです⁈最近ご無沙汰のようですが、また彼女の素敵な歌声を聴きたいです。