ずどこんちょ

壬生義士伝のずどこんちょのレビュー・感想・評価

壬生義士伝(2002年製作の映画)
3.7
元祖、単身赴任サラリーマンのサムライ魂に泣かされました。

過酷すぎる貧しい暮らしをしている妻子のために、愛する故郷を捨てて脱藩浪士になった吉村貫一郎は新選組に入隊します。
柔和な人柄と卓越した剣術を持ち合わせて誰からも好かれていた吉村ですが、新選組として活躍すれば報酬の金をせびる滑稽な一面もあり、隊士たちからは「守銭奴」とまで呼ばれていました。
でも、その金はすべて故郷で暮らす妻子のための仕送り金だったのです。家族のことを養わなければならない。それでいて、脱藩した身の吉村は家族に会うことも叶わない。誰も知らなかった吉村の抱えた事情を、時を超えた明治時代から回想するのです。
吉村の生き方は現代の、単身赴任で闘うサラリーマンをも彷彿とさせます。

家族のため、だけではありません。
吉村の中心には「自分の腹を満たす前に、他人の満たされない腹を心配する」自己犠牲の精神がありました。あと一個の握り飯を自分が食べずに、斎藤さんに分け与える優しさ。
その愛に溢れた優しさが無性に許せない斎藤さんの気持ちも理解できます。
自己犠牲って、愛に満ちて尊い反面、自分自身を大事にしていません。
もっと自分のしたい事をして、会いたい人に会えれば良かったのに。吉村が自分の幸福を求めることも、周囲の人たちが求めていた幸せだったのではないでしょうか。

大河ドラマ『新選組!』を見ていた自分からしたら、佐藤浩市が芹沢鴨で、堺雅人が山南敬助なんです。もうそれで頭の中で固定されていて、しかも佐藤浩市演じる斎藤一の雰囲気が大河の芹沢鴨と似ている上に、堺雅人演じる沖田総司も山南さんに似ているから困る。
時折、混乱しておりました。