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アイガー北壁のsymaxのレビュー・感想・評価

アイガー北壁(2008年製作の映画)
3.6
アイガー北壁…又の名を"死の壁"…

ベルリンオリンピック開幕直前の1936年。

ナチス・ドイツは、未だ誰も踏破した事が無い"死の壁"を登頂した者に、オリンピックでの金メダルを約束します。

それは国威発揚の為、強いては"アーリア人"の優秀さを世界にアピールし、ナチス・ドイツの正当性を知らしめる為にもドイツ人が初登頂しなければならないのでした。

若く優秀な登山家のトニーとアンディが、初登頂を目指しアイガー北壁に挑みます。

順調に登っていましたが、やがて、"死の壁"がその本性を現すのです…

実話を基に、アイガー北壁の容赦ない美しさと厳しさとを否応なく見せつけられる力作。

私は、登山については全く分かりませんが、恐らく当時の装備を忠実に再現し、過酷に次ぐ過酷な展開と重厚な演技に、見ているこちらも力が入ります。

厳しく悲惨な北壁登頂に対して、麓のホテルでは正装し暖かな室内で贅沢な食事をしている見物人達…

望遠鏡を見ながら一喜一憂し、アーリア人の優秀さを論じる記者には辟易します。

北壁と麓のホテルを対比しながらストーリーが進んでいく構図には、直接的な表現はありませんが、ナチス批判からの反戦思想が見え隠れしていて、その構成の巧さには唸ってしまいました。

トニーとアンディの幼馴染みで、トニーとは恋人関係であったと思われるルイーゼ〜恐らくフィクションでしょうけど〜は、中々、複雑な立ち位置で、要らないキャラじゃないかと思ったりもしますが、彼女のセリフが製作者の意図するところであるのかと思いますので、必要なんですかね?
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