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荒野の女たちのKuutaのレビュー・感想・評価

荒野の女たち(1965年製作の映画)
4.2
中国に移住し、キリスト教布教のためのコミュニティを築いている女たち。宗教に縛られ、浮世離れした振る舞いを見せる彼らのもとに、医者の女(アン・バンクロフト)が加わる。彼女の合理的な思考、奔放な行動によって、コミュニティはコレラの蔓延などの危機を乗り越えていく。しかし、突如現れた盗賊集団に施設を占拠されてしまう。

荒野を彷徨う男の暴力性は、女とは相容れない。あの世に片足を突っ込んだ仲介者としてウェインを描き、男の視点から両者の臨界点を描いたのが「捜索者」だったとすれば、今作は女、アンバンクロフトが荒野と対峙する映画だ。

ウェインは「そうとしか生きられない男」の宿命を背負い、異形として荒野に消えた。しかし今作のバンクロフトは、生きるため、男と渡り合うため、自らの判断の下で異形の側に身を沈める。苦々しい展開を締めくくるラストショットに、「捜索者」のような鮮烈な内と外、光と闇の対比は待っていない。

人を繋ぐ物の受け渡しが、この映画では失敗し続けている。投げられた服はまるで受け取られない。崩壊寸前の女のコミュニティと、暴力だけが支配する男の世界。両者の間に立つバンクロフトは革のジャケットを羽織り、タバコを吸いながら、女を救っていく。クライマックス、辛うじて手渡せた医者のカバン、女同士のハグとキスに涙したのも束の間、最後の水のシェアに呆然。衝撃的な遺作だ。84点。
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