ブラックユーモアホフマン

TOKYO!のブラックユーモアホフマンのレビュー・感想・評価

TOKYO!(2008年製作の映画)
4.0
それぞれの監督らしさがしっかり出てて面白かった。

ミシェル・ゴンドリーって、好き嫌いあると思うけどやっぱこの感性の映画作る人、他にいないもんなぁ。面白いよなぁ。
CGも使ってるけど、パンすると人間で、もう一回パンして戻ると椅子で、とか本当にアナログな手法で魔法をかけるのも素敵。カラックスとはまた違う形で人力。マンパワー。でもそれこそが映画だなと思う。

カラックスは頑なにドニ・ラヴァン主演なのが、そういう人なんだろうなと思う。姿勢を貫くのはかっこいい。
ジャンルとしてはコメディ。めちゃくちゃ笑った。「糞」てネーミングからしてふざけ倒している。
初めマンホールから出てきた時、「河童だ」と思った。あのカット面白い。
色んなメタファーとして見られるとは思う。僕は、メルドは誰の心の中にもある破壊衝動の化身ではないかと思った。『ゴジラ』の音楽が流れるのも馬鹿馬鹿しくて面白かったけど、人間のサイズではあるものの彼はいわば怪獣で、銀座の街を悪行の限りを尽くしながら闊歩する姿はまさに、銀座和光本店の時計塔を壊して東京を焼き尽くすゴジラの姿と重なる。そしてそんな彼の暴れっぷりに妙に心がスッとしている自分に気づく。目的もなく迷惑をかけまくる彼の姿はもはや清々しい。しかし彼は社会に害悪な存在として排除されてしまう。果たしてそれが正しいのかと、ブラックなユーモアを効かせて語っているように見えた。
恥ずかしながら実はこれが初カラックスでした。なので作家性とかはまだよく分かんない。『アネット』タイミングで特集とかやってくださいユーロスペースさん。

ポン・ジュノは、宅配ピザ好きだよね。しょっちゅう出てくる気がする。
一番微妙だったかなぁ。ミシェル・ゴンドリーとカラックスの強烈な作家性と比べると綺麗に作りすぎてるというか。だからこそ後にアカデミー賞も獲れるんだろうけど。
でも細かい演出がやっぱりポン・ジュノっぽいなーとは思った。ウェルメイドに見えて実は特徴的、でもそこが地味で伝わりづらい。意外とそういう監督なんだろうな。一番、日本映画のようにも見える作品だった。アジア人特有の感性みたいなものが共通しているんだろうか。
香川照之も大好きな俳優だけどさすがにソン・ガンホほどは画面がもたない。蒼井優は今まで見た蒼井優の中で一番可愛かった。けど、ガーターとかボタンとかフェチが強くてちょっとキモいなと思ってしまった。竹中直人が珍しく良い。グエムルの怪物の動きのモデルの一人は竹中直人なんですってね。