螢

危険な関係の螢のレビュー・感想・評価

危険な関係(1959年製作の映画)
3.0
魅力的な毒婦を演じきったジャンヌ・モローに乾杯。
異常な遊戯を楽しんでいた夫婦の、些細なきっかけからの崩壊と破滅を描いた作品。

互いの不倫を報告しあい、時には後始末の協力までしていた、外交官である夫のバルマンとその妻のジュリエット。

ジュリエットは自身の愛人であるコートが、彼女の親族の一人で若く美しい娘セシルと婚約したことから、歪んだ嫉妬に狂う。
ジュリエットは、夫のバルマンに、セシルを誘惑させる。
バルマンは、妻の依頼に従いながらも、同時期に、マリアンヌという人妻に本気で夢中になってしまう。
これが、身勝手な二人の破滅への第一歩で…。

毒を弄んでいたはずが毒に飲まれたというか、因果応報的に破滅する夫婦が、とてもスタイリッシュな映像の中で描かれています。

ただし、登場人物たちの心理描写の書き方はあまりうまくないというか薄いので、展開は上滑りしてる感が拭えなかったです。
皆、どこでそんな、破滅に向かう選択をする要素があったの…??と、いまいち感情移入できず…。

ですが、ジュリエットを演じたジャンヌ・モローの、身勝手な悪女ぶりに反して、侘しさというか虚しさが滲み出る、退廃的で怪しいのに、どこか儚さや弱さを感じさせる、独特の色気と魅力はすごかったです。
同性なのに本当に魅せられてしまった…。
彼女にとってはこれ以上なく残酷な生き地獄的なラストシーンの、有るか無きかの表情が、またいい。

「死刑台のエレベーター」しかり、この人、こういう役を演じたら、本当に最高ですよね。

総合的には微妙ですが、ジャンヌ・モローの魅力を楽しむ映画としては、良い作品でした。
螢