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風と共に去りぬのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

風と共に去りぬ(1939年製作の映画)
3.8
1936年6月に出版されたマーガレット・ミッチェル原作の「風と共に去りぬ」がベストセラーとなり、出版の翌月には大物製作者デヴィッド・O・セルズニックが映画化権を獲得。
3年の歳月と多額の費用をかけて製作されたハリウッド大作。
セルズニックの意向が色濃く反映され、監督は当初のジョージ・キューカーからビクター・フレミングに変わり、更にベン・ヘクトも参加するなど混乱をきわめた。主人公のスカーレット・オハラの人選も話題に。
テクニカラー、スタンダードサイズ。
原題: Gone with the Wind  (1939、3時間42分)

1861年、南北戦争直前のアメリカ南部、ジョージア州。
大地主ジェラルドの娘スカーレット(ヴィヴィアン・リー)は、アシュレー(レスリー)を愛していたが、アシュレーは彼の従妹メラニー(オリヴィア・デ・ハヴィランド)と結婚。
勝ち気なスカーレットはあてつけでメラニーの兄と結婚するが、夫は南北戦争が始まり戦死。今度は金のため妹のフィアンセを横取りして結婚するが、彼も亡くなる。
一方、出会いの時からスカーレットに惹き付けられていたレッド・バトラー(クラーク・ゲーブル)は、北軍がアトランタに迫る中、戦火の中からスカーレットとメラニーを救出する。
やがてスカーレットはレッド・バトラーの求婚を受け入れるが、アシュレーへの思いが断ちきれず、2人の結婚は破綻する。
バトラーが彼女のもとから去った時、初めてスカーレットはバトラーを愛していたことに気づく…。

~主要な登場人物~
①スカーレット・オハラ(ヴィヴィアン・リー)
②レット・バトラー(クラーク・ゲーブル)
③アシュレー・ウィルクス(レスリー・ハワード)
④メラニー・ハミルトン(オリヴィア・デ・ハヴィランド)

~①スカーレットの家族:
タラで農園を営むオハラ家  ~
・父ジェラルド(トーマス・ミッチェル)
・母エレン(バーバラ・オニール)
・妹スエレン(イヴリン・キース)
・妹キャリーン(アン・ラザフォード)
・使用人マミー(ハティ・マクダニエル)
・使用人ポーク(オスカー・ポーク)
・使用人プリシー(バタフライ・マックイーン)
・使用人(綿花農園)ジョナス・ウィルカーソン(ビクター・ジョリー)
・使用人(綿花農園)ビッグ・サム(エバレット・ブラウン)

~③アシュレーの家族:
オハラ家の近く、twlve oaks (樫の木屋敷)の地主、ウィルクス家~
・父ジョン(ハワード・ヒックマン)
・妹インディア(アリシア・レット)

~④メラニーの家族~
・兄、チャールズ(ランド・ブルックス):スカーレットの最初の結婚相手

~他の登場人物~
・スカーレットのbeaux、スチュアート(ジョージ・リーヴス)&ブレント(フレッド・グリーン)のタールトン兄弟
・フランク・ケネディ(キャロル・ナイ):スカーレットの2度目の結婚相手
・叔母ピティ・パット・ハミルトン(ローラ・ホープ・クルーズ)
・叔父ピーター(エディ・アンダーソン)
・ミード医師(ハリー・ダベンボート)
・ミード夫人(レオーナ・ロバーツ)
・その息子フィル(ジャッキー・モーガン)
・メリウェザー夫人(ジェーン・ダーウェル)
・娼館のベル・ワトリング(オナ・マンソン) 
・スカーレットとバトラーの子どもボニー(カミー・キング)

~アーネスト・ダウスンの恋愛詩「シナラ」の一句~
「騎士道が花咲き綿畑の広がるオールド・サウス(古き良き南部)と呼ばれる土地
その美しい世界にかつて生きた
雄々しい男たちととあでやかな女性たち、そして奴隷を従えた支配者たちも歴史に記されるだけの儚い思い出
その文化(時代)は風と共に去りぬ…」
There was a land of Cavaliers and Cotton Fields called the Old South.
Here in this pretty world, Gallantry took its last bow.
Here was the last ever to be seen of Knights and their Ladies Fair, of Master and of Slave.
Look for it only in books, for it is no more than a dream remembered, a Civilization gone with the wind...

「この世で唯一価値あるのは土地だけだ。土地は永遠に残る」
Why, land is the only thing in the world worth working for worth for,worth dying for.
Because it's the only thing that lasts.

「神よお聞き下さい。この試練に私は負けません。家族に二度とひもじい思いはさせません。生き抜いてみせます!
たとえ人を騙し、盗みをし人を殺してでも!神よ誓います。二度と飢えに泣きません!」
As God is my witness, I'm going to live through this and when it's all over, I'll never be hungry again. No, nor any of my folk. If I have to lie, steal, cheat or kill.
As  God is my witness, I'll never be hungry again.

「○○の面倒をみて。私の面倒を見てくれたように。彼には内緒に。約束よ。
○○に優しくしてね。あなたを愛しているわ」

「私は幻を愛してきたのね。でも、そんなことはいいの。過ぎたことよ。どうでもいいの」

「率直言って、俺の知ったこっちゃない」
Frankly, my dear, I don't give a damn.

「今は考えられないわ。頭がおかしくなりそう。明日考えよう」
I can't think about that right now. If I do, I'll go crazy. I'll think about that tomorrow.

「そうだ、タラがあるわ。故郷に帰ろう。そしてレッドを連れ戻す方法を考えればいいわ。明日に望みを託して(明日は明日の風が吹くから)。
Tara! Home. I'll go home. And I'll think of some way to get him back. After all ,
tomorrow is another day.

"幻の愛"と"真実の愛"

この大衆小説には、南部において黒人が置かれていた現実を反映していないという批判がある。
また、アシュレーと周辺の人たちはKKKのメンバーで、KKKを擁護しているようだとも言われる。
だが、南北戦争で敗北し荒廃した南部では、スカーレット(ヴィヴィアン・リーが脚本を嫌ったようにスカーレットはとても嫌な人物として登場)やレッド・バトラーのような、現実的でなりふり構わない強い人間じゃないと生き抜いていくことは出来なかったのではないか。
現実に対応できない弱いアシュレーと一見虚弱そうだが実は真の強い聖母のようなメラニーは過去の人間とされる(メラニーの精神は受け継がれる)。
この小説や映画が爆発的に売れたのは、南部再生への希望の象徴としてスカーレット・オハラというヒロインを作り出したことによる)。
したがって、黒人の描かれ方については(ミッチェル家では主人と奴隷の関係が良好だったとはいえ)、現代から考えると確かに疑問もあるが、原作者ミッチェルの主眼、テーマは別のところにあったと考えられる。
なお、登場人物では、聖女メラニーと娼婦ベル・ワトリングが印象に残る。
テクニカル・カラーの映像(夕焼けのシルエット)とマックス・スタイナーの音楽「タラのテーマ」の美しさ。
 ウォルター・プランケットの衣装も素晴らしい。
日本とアメリカが戦争中(ハリウッド映画の豊作年である1939年)に敵方が作った映画の1本で、検閲があっても当時見ることができた日本人は国力の差を感じたという逸話がありますね(日本公開は1952年)
中学生の時はあまり面白いと思わなかったのですが、今はポイントが上がっています。
小説は岩波文庫(新訳、全6刊)が読みやすく解説も充実している。
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