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ジョンQ 最後の決断のdeenityのレビュー・感想・評価

ジョンQ 最後の決断(2002年製作の映画)
4.0
デンゼル・ワシントンが演じると善悪の判断がややこしくなりそうなのは私だけですかね?笑
とりあえず今作の彼は良きパパでよさそうです。大切な一人息子が野球の試合中に倒れてしまい、心臓を移植しなくては長くは生きられないと宣告されます。その息子のために奔走するという、まさに父親の鑑です。ただ、そもそもの作品のテーマとしては根深く、アメリカの医療保険制度に対して問題提起した作品であると言えます。

心臓移植には大きなリスクが伴います。だから生半可な覚悟ではできないし、多額な金額がかかるのも想像の範疇です。ただ、現在の医学の進歩によって、多くの病を治すことができるようになった今、その治療を当たり前に受けることができるのか、というのは一つの問題となってきます。

もちろん移植するということは互いの適合性が欠かせないくらいはわかっています。だからドナー登録が必要になってくるのも当然知っています。
しかし、登録するだけで膨大な費用がかかり、払えなければ勝手に退院させられる、というのは考えてもみませんでした。
例え技術が進んで多くの病気が治せるようになったとしても、平等に治療してもらえるかどうかが問題となってくるわけです。

父ではない自分にとって、一個人の意見としてはもちろん納得いきません。憤りを覚えます。「院長のク○野郎!」って感じです。
ただ、院長側の考えってのもあって当然なんですね。誰でも気軽に、となってしまえば収拾がつかなくなる恐れがありますし、命の責任を負う以上は無責任に独断で行動はできないでしょう。それでもムカつくのは院長役の人の演技力でありますが、組織と個人という問題について上手く引き立てられているように思いました。

ただ展開は王道です。王道というか息子のために病院をジャックして人質を取るというのは滅茶苦茶です。しかし、「そんな状況ありえんだろう」と思うくらいに上手くいきます。まあ映画だから当然っちゃ当然なんですが、それでも上手くいったのは人質も観衆も視聴者も味方につけたジョンと息子の親子愛と医療問題に対する世の意見でしょう。
だとするならば、どうしてあそこで引き金を引くエンディングに持っていかなかったのか。テーマも含めると大きな問題を訴える作品になり得たのに。あそこで命を失うからこそ観客に訴えかけるものがあったはずなのに。帳尻合わせの裁判シーンは不要なんだよ。名作となり得たのに惜しい作品。
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