ブタブタ

薔薇の葬列のブタブタのレビュー・感想・評価

薔薇の葬列(1969年製作の映画)
5.0
兎に角ピーターが可愛い!!昨今の《男の娘》とかジェンダーレスモデルとか、美少女にしか見えない美少年とかとも違う。
明らかにコレは男だと分かるのにこの全身から醸し出されるオーラや色気や可愛さは何なのだろう。
ゲイバーでのロングウィッグ姿なんてもう、今はなき沢尻エリカさんみたい。
マッシュルームカットにビニルレザー袖無しジャケット、膨らんだ袖のブラウスにパンタロンのあのスタイルが特にカッコイイ。
もうお洒落過ぎる。
主人公《エディ》をやれる役者を探して松本俊夫監督は百人以上と面接するもイメージに合う相手はおらず、六本木のゴーゴークラブで踊ってた池畑慎之介(本名)さんを紹介されて出会い、その場で《エディ》役に即決したという。
何と当時16才!!でコレが映画初出演で初主演で《ピーター》としてデビューするって凄いな~。

千葉市美術館での『1968年激動の時代の芸術』でも『薔薇の葬列』はこの時代と密接な関係な持つ実験映像前衛映画の極北として紹介されてたけど漸く見れた。
安保闘争《反帝》のヘルメット被ったゲリラが走り回る60年代新宿。
アングラ芸術・文化のメッカとも言うべき猥雑な都市《新宿》を舞台にゲイボーイ《エディ》の愛と破滅をメタ的実験前衛映像演出の限りを尽くして描く。
元になってるのはギリシャ悲劇『オイディプス王』其れをゲイの男同士、時系列も時空間もシャッフルしてバロウズがカットアップで編集したみたいなカオスの世界。

松本俊夫監督・長編映画第一作だけど、この一作で映画という芸術表現としてやる事は全部やっちゃった様な凄さ。

リマスターのBluRayも出てるみたいだけど海外版DVDのジャケットが『Funeral Parade of Roses』って英題と共に写真、デザインが兎に角カッコイイので。

新宿って街は勿論建物その他可也変わってるけど新宿駅の西口・東口はじめ道や区画デザイン等は殆ど変わってなくてあそこはあそこだ!と今見ても分かるのが凄いわ~。
エディがナンパされる任侠映画専門映画館は今のK’sシネマがある場所じゃないだろうか。

テクノサウンドに乗せて早回しのコントみたいなシーンとか明らかに『時計じかけのオレンジ』だし《映倫》マークをグラフィックとして使うとか庵野秀明監督とか後の作品にも多大なる影響を与えてると思う。

池田龍夫の絵が並ぶギャラリーでシルエットのマントの男、顔半面が焼け爛れた男、時系列無視で突然挿入される意味不明なシーンもいい。

松本俊夫監督は映像化不可能小説『ドグラ・マグラ』の映画化もしてるけど同じく夢野久作の小説『暗黒公使(ダークミニスター)』をピーター主演第二弾として『薔薇の葬列』張りの前衛実験メタ演出を駆使して撮ってたら凄い事になってただろうな~と妄想しつつ終わります🌹
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