Keigo

裏窓のKeigoのネタバレレビュー・内容・結末

裏窓(1954年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

ヒッチコックは『めまい』に続いて三本目。
面白いなあ、これも。

そもそも表ではなく裏窓から他人の生活を覗き見る主人公という設定それ自体が、いくつかのより映画的なテーマ性を孕んでいて魅力的。その魅力的な設定が最大限活かされるような形で人物と状況と展開を演出し、ものの見事に成立させてしまうところに、ヒッチコックの卓越した技量が表れているんだろうと思う。

ごきげんなジャズナンバーから始まって、まるで舞台の幕開けのように裏窓のブラインドが順番に上がっていく。裏窓から見える隣人たちの日常。バラエティ豊かな隣人達だこととか、いくら暑いとはいえプライバシーもへったくれもなしにこんなに開けっ広げなもんかねとか、よくもまぁこんなに各部屋の視認性が高い部屋があったな...え、もしかしてこれセット?全部?とか思ってるうちに、この作品におけるリアリティラインがなんとなく掴めてくる。そういう意味では冒頭から演劇的な印象がすごく強い作品で、演劇を観ていてセットのクオリティは気になってもリアリティはそこまで気にならないのと同じように、舞台設定としてのリアリティのなさはそこまで気にならなかった。

むしろこれまで観てきた映画女優の中でずば抜けて気品があって美しいと思ったグレース・ケリー扮するリザからあんなに言い寄られてもつれない態度を取るジェフ(ジェームズ・スチュアート)が、最もリアリティがなかったと思う。あんなに美しい彼女がいるなら他のことどうでもいいだろ!!!という気になった。

リザが最初に登場するシーンの艶やかさには度肝抜かれたし、電気をひとつずつ付けながら名前を言うシーンでそれこそ感電。大して感情移入もしてないし積み上げられたカタルシスもないのに、あんなに美しいと思ったキスシーンは初めてだ。ものすごく男性的というか、願望にも近い男の妄想とも言えるシーンかもしれないけど。


ちなみに結局ラーズが妻を殺したのかどうかは、劇中でははっきりしなかったよね...?もちろん限りなくクロに近いとは思うし、終盤にはそれらしい台詞もあったような気はするけど...何か決定的な情報を見逃したのだろうか。
もし彼が犯人だったなら、ラストシーンはそんなバラバラ殺人事件が起こったようなアパートで他の住人達はそんなことも忘れて穏やかに朗らかに暮らしているということなんだろうか...結局ジェフの推理は妄想ではなく事実だったということ?

もし自分が何も見逃してなくて、劇中では彼が犯人だとは明言されていないんだとしたら、ネットには結局彼が犯人でしたというお話ですと説明されているものが予想外に多くて、怖いなと思った。もちろん“見る”という行為には限界があるわけで、全てのことを“見て”確認出来る訳ではないけど、この作品を見ていた観客も結局ジェフと同様に、決定的な証拠や確証ははなくともラーズは人殺しだと思い込んでしまうんだなと...。

ただ自分が読み取れてないだけだったら、それはバカの戯言なのでお許しを🤪
Keigo

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