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いつものようにの堊のレビュー・感想・評価

いつものように(1997年製作の映画)
4.8
このジャケット通りの映画。早すぎるジャドアパトー。失われてしまったミラノ座前集合であったり、ガード下での写ルンですだったり、新宿の情景がたまらなく愛おしくなる。97年のどこかにこういう人たちはいた、そして『どんてん生活』より2年早く、『・ふ・た・り・ぼ・っ・ち・』からは9年後。土下座のような格好で上がり込んだバイク便の男と女が奇妙な距離感のまま親しくなっていき、三人乗りバイク、有楽町駅前中園亭、早朝の目白駅前、上野駅ホームへ。弁当食う姿から銭湯の繋ぎにひとしきり笑わされ、似顔絵を描かれるという行為は顔を見るという行為と似て非なることだとか、室内の花火とか、「大丈夫、つけてみせるよ。俺、花火得意だし!」。キアロスタミが絶賛してるのもなんとなくわかる。リアルな"炙り"ドラッグ描写が妙に浮いているが、これも90年代末の東京ということで許す。ストーブを向けてあげる優しさの距離感。薬局にジャンプなんてない。でもこの年まで週刊少年ジャンプは600万部を売り上げていた。
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