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ロボコンの堊のレビュー・感想・評価

ロボコン(2003年製作の映画)
5.0
人生ベスト。人と人とはほんとうは向き合って会話したりなんかしない。手前に人を置いて奥行きとで三角形を作るカットを反復しまくるのがとにかくクセになる。
嘘みたいなファーストカットからなぜか徹夜開けみたいな目をしている長澤まさみの一挙一同に心身が持ってかれる。シャッターをくぐる、ベッドに寝かせられる、スカートをはたく…細やかな運動の持続がすごい。「おもぅわない」「あ!りがとう」みたいな日本語を解体していく発話とか、声に出さないことばだけの切り返しとか、何一つ説教もメッセージも存在しないのに脚本がすごいと感じる。声を出さずにふはっと笑う。ありがとうと呟く。自分の人生を他人に委ねることを自分で選ぶこと、それがロボットをうまく操縦できるようになること。なんて素敵なメタファーなんだ。『雪の断章』のオマージュみたいな熱唱パートと蘇州夜曲が流れ始めるとこ、凄すぎる。初期の七尾旅人みたいな小栗旬が縦のまま長澤まさみを抱きしめたりしながら延々ロングショットで試合を2カメで見せてくれるんだけど、ロボットは本当に長澤まさみが操縦していて、だからこそラストの勝利のカットは本当にどうやって撮ったんだろう。『カリフォルニア・ドールズ』みたいでバチクソ興奮した。アカルイミライ以来の蓮実重臣。映画のつくり自体も『ごめん』を思わせたのだけれど、『ごめん』の大友良英的な異物感のあるサントラ。
古厩監督は長編第1作の『この窓は君のもの』ではたまたま幼なじみと過ごすことになった数日間の引っ越しと引越しの空白の夏の時間で、今作で長澤まさみに「ずっと今日が続けばいいのに」と言われる時間は高校生のなにものでもない「あいだ」の時間でしかない。『灼熱のドッジボール』も見れていないけれど(本当にみたい。今泉力哉監督なんでもするのでデータください)「転校していく少女が乗り遅れた電車を待つあいだ友達とはじめるドッジボールの時間」らしい。
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