Filmura

キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャンのFilmuraのネタバレレビュー・内容・結末

4.4

このレビューはネタバレを含みます

なんの前情報もなしに見たので冒頭の感想は「意外…そういう方向なの…楽しめるかな…」だったけど、終わってみれば引き込まれて2時間20分があっという間。噛み締めがいのある良作だった。

何の前情報もなしに見たから、原題やポスターから、ルパン銭形みたいなライトでポップな捕物なのかな、と思っていたから深みに驚き。クライム"コメディ"なのか?これは。


もちろん、メインシナリオはフランク(レオ)の機転にあと一歩で躱されながらも着実に迫ってくるカールハンラティ(トム)の捕物的な攻防にはハラハラはするし、フランクが新たな詐欺に挑む仕込みやらにMIP的なワクワクや笑もあるんだけど、

随所に描かれるフランクのピュアさや寂しさ、温かい家族への想い・憧れといった心情が、直接的なセリフではなく行動やレオの表情・演技で自然に伝わってきて、伝感情移入させられて好きにさせられちゃう。

幸せな暮らしができてたのも、大好きな家族を引き裂いたのはお金。自分がお金さえ稼げば、かっこいい父さん(クリストファーウォーケン)の元に母さんは帰ってきてくれるかも…危ない橋を渡りながらもピュアな動機でひた走るフランク。悪いことしまくってるんだけど、父の教えを活かして稼ぐ姿に父さんに認めてほしい、父さん父さん!な10代の純粋さ。と寂しさ孤独さ。

でも彼の思惑とは裏腹に大人はそれぞれが次の道を歩んで…家族、人間関係ってほんと一筋縄ではいかない。夫婦について家族について色々考えさせられちゃう


彼の奮闘の先は多分ハッピーエンドにならないであろうことを感じながら見る僕らは胸が苦しいけど応援してしまう…それは母の今を知る父の気持ちに重なってたのか?
もしかして父は気づいていたけど、フランクの気持ちに胸が苦しくてでも嬉しくて言えなかった(乾杯の涙の背景)のでは?最後はこんなの長く続けちゃいけないと真実(もう戻らない家族)を告げる…切ない。


ハンラティに電話をかけるフランクが描いてたもの。
最初は愉快犯的な感じかな…と思ったけど、全然違った。カールに電話するのは決まってクリスマス。キリスト教圏では家族の日。皆は家族と過ごしてるなかで自分は一人…周りにも、家族にするほんとの自分を言えずに過ごしてる中で、彼は、カールだけが唯一自分の本当を知る人物。
彼がクリスマスにも家族をさし置いて、自分を一生懸命追ってくれてることはほんとは怖いはずだけどきっとフランクはどこかうれしかったんだ。捕まりたくないけど、追って欲しいからヒントも出す。きっとカールなら気づくと思ってヒントを出す。
気づかないうちに敵なのに家族(第二の父)のように思ってた気がするし、父は子に嘘をつかないとどこかで信じたかったからこその造幣工場で信じた嘘ついたのくだりがあったんじゃないかな。嘘かと思ったけど嘘じゃなかった、カールは嘘をつかなかった。


原題:Catch Me If You Canについて
「捕まえれるもんなら捕まえてみな」
これは孤独なフランクを唯一本気でかまってくれるカールに向けた、フランクからの親愛も込めた挑戦状であり、ある種お願い、なのかな。
レオとトムの心の交流。想いと深層心理の矛盾からくる自滅的な行為に及ぶレオをよく表してる気もする。


ラストは。
送還の機中で父の死を知り最後の逃亡、たどり着いたもとの家で母が新しい家族と新しい幸せを手に入れる姿。取り戻したかった幸せは戻らない、どこにも自分の家族はなくなったと静かに悟った悲しみに沈んだ逮捕劇から、最後なんて悲しい終わり…と胸が苦しかったが、最後は才能を活かしてFBIで活躍できたと聞いてちょっと救われた。敵同士だった二人も最後は親友。

実際に飛行機を飛ばし、医療に従事し、司法試験にも受かっちゃう、才能、幸せな家庭の中でもっと他のことに使われてたら…と思うと、環境・家庭の人格に及ぼす影響は大きいね。途中からまでは温かく幸せだったからこその家族愛ある大詐欺師が生まれてる。よく考えたら動機はピュアで何だか許せそうになってたけど、やってることえげつない大犯罪だからよくないね笑。
そしてブレンダは可哀想。終わり。


フランスの拘置所からの逃亡はどこの時系列?

余談1
クリストファーウォーケン、目で語れる役者さんって素敵。今さらレオと彼のファンになりました。

余談2
時系列を行ったり来たりして伏線を匂わせる手法ってよくできてるなぁと改めて。
(未来パート)後から繋がってくるからしっかり見ないと!
(過去パート)伏線の回収があるからしっかり見ないと!
って感じで頭使うけど自然とよく見ちゃう笑。その点ではユージュアルサスペクツが最高峰だと思うけど、20年代ジェントルメン然り本作然り、上手く作ってあるなぁ。脚本・演出って映画のキモよね。それを自然に見せる俳優の演技力、全部揃ってこそ名作と思いました。う
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