くりふ

パーフェクトブルーのくりふのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
3.0
【ミソジニーのパズル】

Netflixに入荷?したので久しぶりに見てみた。

今敏の監督デビュー作。元々OVAとして作られたものが映画として公開となり、また海外逆輸入のように評価され、当時としてはサクセスストーリーだったような?…あんまり記憶にないけど。

でも、初っ端で評価されたせいかこの監督、その後がキマジメに凝り固まっちゃった気はする。

本作、緻密に造られており技巧的には素晴らしい。でも物語には全く、心が動かない。これに限らず、今作品で感動した記憶がない。

物語というよりパズルに近い。人物はそのピース。だから特有の魅力がなく、主人公の未麻も要のルミも、違う名の人物と充分、入れ替えが可能。…これ、最近だと新海誠のでも感じることだけど。

大友克洋『AKIRA』の功績は大きいものだったが、アチラもハッタリ映画で物語はスカだった。“もうはじまっている”ってナニがだよと。実はノープランだと見え見えだった。

そんな大友影響下の流れから生まれた本作も、撹乱遊びに走って人間そのものには迫らない。そのペラさゆえ、解釈というパズル遊びには向いているのだろうが、私はそこに興味は持てない。

パズルが出来上がっても、出来上がったという達成感だけで終わっちゃうからね。

時代の刻印がスゴイ点は面白かった。当時はスプラッタ・ホラーがまだウケており、脅威に追われるヒロイン苛めもウケていて、それがもろ、展開の骨格になっている。

そして根底に敷かれた、恐らくは無自覚のミソジニー。要は、“女はコワイ”って話だからね。

女性搾取に対しては、キレて化け物化するしかない。知力で立ち向かうヒロインなど、作者は考えようもなかった。振り返ればヒデー時代ではある。

芸能界ってことなら例えば『推しの子』と比べても、その物凄い隔たりに驚く。アイドルファンが男しか居ないって所なども、本作の性搾取ぶりを際立たせているね。

結局は、レイプやヌードが見せ場となっている。キモチ悪い筆頭要因はそこではと。劇中劇“ダブルバインド”の作者と、本作の作者は、実際は共犯者だと思う。

そして、終わってみても、あれだけの狂気を生み出した原因がわからない。芸能界でああ扱われて連続殺人に走った…なんて事例、知らないし、あり得んと思う。

やっぱり全体に満ちる、火のない所に煙を立てるような無理矢理感に、馴染めない。

これでユーモアが効いていれば、まだ心が入れる余地もあるのだけれど…。

<2025.4.3記>
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