さうすぽー

パーフェクトブルーのさうすぽーのレビュー・感想・評価

パーフェクトブルー(1998年製作の映画)
3.8
自己満足点 76点

先ほど「バットマン ビギンズ」のレビューを書いたのでこのまま「ダークナイト ライジング」を書こうと思ってたのですが、本日がアニメ監督今敏氏の命日ということでこちらを書くことにしました。


今敏の監督デビュー作にして一気に名を上げた作品ですね。
アイドルである霧越未麻が、事務所の以降により女優に転身したことにより、自分に自信を失っていき、次々と奇怪な出来事が主人公に襲いかかる内容。

ジャンルはサイコスリラーにあたりまして、サイコスリラーと言えば実写の映画だと名作が多く存在していて日本のアニメも何作かありますが、90年代当時のアニメーションとしてはかなり珍しいと思います。
それでいて今敏の独特な演出手法で唯一無二なアニメーションになっています。

また、芸能業界を舞台にしたスリラーなので内容的には一見実写でもいけるも思われがちですが、はっきり言ってこれをそのまま実写化させるのはほぼ無理です!
今敏による天才的かつ変態的な演出で展開は目まぐるしく変わり、なおかつ現実なのか虚構なのかが観客にも曖昧にさせる素晴らしい演出は誰も真似は出来ないと思っています。


今敏は緻密でリアリティ溢れる作画を特徴としていますが、今作ではデビュー作で予算も少ないからか、正直他の映画と比べてそんなに緻密ではなく、少しばかり登場人物の表情は崩れてしまっています。
しかし、その崩れ具合が逆に本作における不気味さを良い意味で醸し出せていて、映像に非常に合っていました。


...とここまで絶賛してきて僕も好きなのですが、正直言うと僕は本作は今敏作品の中では下位になってしまう作品なんです(^_^;)

その理由としては、エロ描写がやり過ぎている所です。
ハードなエロ描写は作品に合ってれば全然大丈夫なのですが、今作ではエロ描写はかなり露骨で、アダルトアニメと間違われるくらい興味本位にも思われるような描写があります。特に劇中のレイプシーン(ドラマ撮影場面)は特に過激なので、そんなに過剰にしなくても良かったのではないか?と思ってしまいました。
これに関しては今敏自身も認めていたようで、製作後のインタビューで「やり過ぎた」と仰ったようで「あぁ、やっぱりな」と思いました(笑)

ラストに関してもそんなに好きではなく、主人公は現実と虚構が曖昧になってしまってるのに主人公の治療は良いのか?と感じてしまいます。


しかしながら、本作の影響力は非常に強く、ハリウッドの鬼才ダーレン・アロノフスキーが「レクイエム・フォー・ドリーム」や「ブラック・スワン」といった傑作映画を作り、本作のオマージュしてる場面を撮っています。
個人的に絶賛とまではいきませんが、素晴らしい作品なのは間違いないです。

そんな素晴らしいアニメーション監督が若くして亡くなってしまったのが非常に残念でなりません。
ご冥福を御祈りします。