堊

犬猫の堊のレビュー・感想・評価

犬猫(2004年製作の映画)
5.0
付き合っていた男を奪われた関係にあるヨーコ(榎本加奈子)とスズ(藤田陽子)の奇妙な共同生活が…などとあらすじを書き連ねたところで本作の魅力を伝えることは不可能。不仲を強調するように鳴り続ける空調、倒れる自転車、鍋の底のカレーをこするときの異音…本作を彩る音はロメール『レネットとミラベル四つの冒険』を思い起こさせるほど豊かであり、Y字路、くくられた風船、犬の正面切り返し、のちの井口奈己作品でも繰り返し用いられることになるモチーフの印象強さはそれを上回るかも知れない。監督がもっとも熱を上げて撮ったことが伝わってくる鏡の前での長回しは圧倒的な百合強度を誇る。人生ベスト。
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