幌舞さば緒

つぐないの幌舞さば緒のネタバレレビュー・内容・結末

つぐない(2007年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

台詞メモ

「小説を書けばよかった。〝城〟って言葉だけで塔も森も村も想像できるのに劇では…役者次第だもの」

「分かってたの。今朝、噴水で…あんなの初めてよ。あなたと自分に腹が立って。あなたが医学校に行けば気が晴れると…自分の気持ちが分からずに。本当にバカね。何の話か分かるわね?先に気づいたのはあなた」「なぜ泣いてる」「分かるでしょ」「ああ、分かる」

「あんたのような上流の男が兵卒とは」「刑務所から入隊したからな」「冗談だろ」「本当だ。刑務所に残るか入隊するかだった。言っとくが俺は上流の出じゃない」

「僕に気兼ねするな」「私の手紙読んだ?許されたら毎日でも会いに行った」「でも僕らにあるのは図書室でのあの瞬間だけだ。3年半前のことだから僕は…」「私を見て。戻ってきて。私のところに」

「私が川に落ちたら?」「助けるよ」

「ありがとう。凄く嬉しい」「なんてバカなことするんだ。溺れるところだぞ」「助けてくれた」「何の冗談だ。二人とも死ぬかもしれなかった」「あなたは命の恩人。ご恩は忘れません」

「セシーリア、再開できるかもしれない。あの日の僕の計画を。正装で希望に満ちて屋敷の道を歩いたかつての僕に戻れるのだ。明確な情熱を持って図書室で君を抱いた男に。物語を再開できるかも…僕は戻る。君と再会しし、愛し、そして結婚するために。堂々と生きるために」

「読ませるために書くんでしょ?」「完成してないの」「どんな話?」「複雑なのよ。一人の少女の話なの。愚かな少女は窓から見た光景を理解できない。でも分かったつもりで…未完のままかもね」

「どんなに働こうと私のやったことから逃れられません。その意味からも。やっと私にも全容がつかめてきました」

「何歳で善悪の区別がつく?君は今18歳か。18でやっと嘘を認めるのか。18歳で道端で死んでいく兵士もいるんだぞ。5年前は真実に無頓着。僕にどれほど教育があろうと君らには下層の者だったわけだ。君のせいで皆平然と僕を見捨てた」

「死ぬんです。主治医によれば脳血管性認知症だそうです。何度も小さな梗塞が起きてだんだん脳が壊れていく。言語能力や記憶の喪失、作家にとっては致命的です。だから完成させました。書かねばならない本を。私の遺作として。おかしなことに私の処女作ともいえる作品です」

「真実を語ろうとずっと前から決めていました。韻も装飾も抜きで」

「実際に見てないことは当事者に聞きました。刑務所の状況もダンケルク撤退も何もかも。でも事実はあまりにも非情で今さら何のためになるかと思ったのです」「つまり正直に語ることが?」「正直に語ること、つまり真実がです」「実は1940年6月、怖気づいた私は姉に会いに行けませんでした。姉の家には行けず告白のシーンは私の想像です。創作しました。真実ではありません。というのもロビーはブレー砂浜で敗血症で亡くなりました。1940年6月1日、撤退の最終日でした。姉とも仲直りできませんでした。同じ年の10月15日、姉は亡くなりました。空襲で地下鉄の駅の配管が破壊されたのです。二人はとうとう一緒の時を過ごせませんでした。心からそれを望み、報われるべきだったのに。ずっと私は…私がそれを妨げたのだと思っています。でも読者はそんな結末からどんな希望や満足感を得られるでしょうか。だから本の中では二人が失ったものを取り戻させたかったのです。これは弱さでも言い逃れでもありません。私にできる最後のことです。二人に贈られたのは幸せな日々です」
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