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フィラデルフィアのEyesworthのレビュー・感想・評価

フィラデルフィア(1993年製作の映画)
4.7
2024年最初に観た映画

『羊たちの沈黙』のジョナサン・デミ監督が1993年当時偏見の目に晒されていた同性愛者とAIDSというセンセーショナルな話題を扱った裁判映画。この作品でアカデミー賞主演男優賞を受賞したトム・ハンクス、デンゼル・ワシントンのコンビが終始安心安定の演技で2人の異なる弁護士像を見せてくれた。

体に多く現れるAIDS特有のシミを理由に弁護士事務所を解雇された主人公アンドリュー・ベケット(トム・ハンクス)が、以前知り合った同じく弁護士のジョー・ミラー(デンゼル・ワシントン)のもとに相談し、訴訟人の弁護を引き受けることに。会社側はあくまでベケットの最近の仕事における態度が悪く、仕事内容も著しく会社に損失をもたらしていたために解雇したのであって、彼が同性愛者であることやAIDSに感染したことは解雇とは無関係だと主張。
フィラデルフィアでの裁判は長引き、やがてベケットに残されたタイムリミットは近づいていくが勝訴を得ることはできるのか…。

トム・ハンクスはこの年と次年度の『フォレスト・ガンプ』でアカデミー主演男優賞を受賞したとあって、AIDSにより衰弱していくベケットの変貌ぶりを見事に脂の乗った演技で表現した。
デンゼル・ワシントン演じたミラーは、最初こそ「ホモは嫌いだ!」と妻に主張するほど偏見を持っていたが、彼と接しているうちに持ち前のユーモアさに加え、同性愛やAIDSに対する理解を深め、何も特別な権利を要求しているのではなく、当事者に対して当たり前の眼差しを国民に対して真剣に要求しているということが伝わってきた。これは現代の我々視聴者も心のどこかに抱いている「LGBTは異常だ」「HIV感染は自業自得だ」等のダークな心理を抉り出されるようで、無意識に偏見していたことを改めさせられる気分になる。

「私が6歳児だと思って説明してください」
「弁護士が1000人を海に沈めたらどうなる?世の中良くなる…」

シリアスな題材だが、それだけにユーモアな場面の方が印象に残る。やはりジョナサン・デミの映画は考えさせられる。
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