真一

フィラデルフィアの真一のレビュー・感想・評価

フィラデルフィア(1993年製作の映画)
5.0
 ゲイを見ると「気持ち悪い」と感じていた「普通の異性愛者」の弁護士が、自らの差別意識に気付いて反ヘイトへ踏み出す過程を描いた名作。問題は差別意識を持っているかどうかではない。差別意識を克服しようと努力するかどうかが問題であり、人類の進歩なんだー。そんなメッセージが胸に突き刺さります。初見。

 舞台は「自由の鐘」で知られる米国フィラデルフィア。「同性愛?気持ち悪いに決まってるじゃん」というノリの弁護士ミラーは、エイズに感染した元法律事務所スタッフのベケットから「不当解雇された。訴えたい」と依頼を持ちかけられる。ベケットの顔の赤黒いシミを見て、恐怖と嫌悪感を覚えるミラー。「勝ち目はないから受けられない」とあっさり拒む。

 そんなある日、図書館を訪れたミラーは、一人で勉強に励むベケットを見かける。ベケットはどの弁護士にも相手にされなかったため、やむなく本人訴訟への準備を進めていたのだった。その時、図書館職員がベケットに「個室をご利用になりませんか」と促す。「エイズ感染者がいる」との通報を受けた対応だ。

 その様子を見て、罪悪感と共に自分の使命に気付き、ベケットに声をかけるミラー。この瞬間、歴史的なエイズ不当解雇訴訟判決に向けた歩みが始まったのだった。

 見所は、差別感情を無意識のくちに克服していくミラーの変化だ。「ホモなんて嫌」とヘイトを連発していたミラーは、ベケットとの交流を通じ、同性愛差別と闘う決意を抱くまでに成長する。ミラーに扮したデンゼル・ワシントンの演技が圧巻!泣かされた。

 見終わって、同性愛を嫌悪していた当初のミラーを批判できないと痛感した。自分にも学生時代、ゲイの友人を深く傷つけた黒歴史がある。今でこそ反差別の集いに顔を出すようになったが、もともとはどうしようもない差別主義者だったわけだ。本作品は、そんな自分の恥ずべき原点を思い出させてくれた。感謝です。

 また本作品は、人権と博愛は知識や情報として得るものでなく、魂で感じ取るものだと教えてくれました。忘れることができない、名作以上の名作です。
真一

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