そう結局ピクサーもディズニーに

ギルバート・グレイプのそう結局ピクサーもディズニーにのレビュー・感想・評価

ギルバート・グレイプ(1993年製作の映画)
4.0
2019年 264本目

再鑑賞。ラッセ監督巡り。この監督の人物描写は前衛的。主人公に正義感を纏わせ、この主人公素敵でしょー?なんて観る側に媚びるようなことはしない。

今作のジョニデ演じる主人公ギルバート。彼は非常に優しい青年。障害を持つ弟の面倒を見て、拒食症で引きこもりになった母をいつも気遣う。父がいない家庭において、父代わりとして見事に努めあげている。素晴らしい人格。
しかし、一方で人妻と肉体関係を持ち、弟を一人待たせ、別の女性と会うことも。
つまり、完全無欠な人物像には決して作り上げていない。
そこは正義感を持つ高尚な主人公でいいじゃん、とも思うけど、そもそも現実において完全無欠な人間っているの?

私はこのギルバートが大好きです。いつも埋まらない心の隙間を何かで埋めたいのは誰でも同じ。人間味ってこういうとこじゃないかな。不貞は間違いない。それでも彼の苦労を分かってたら手放しでは責めることなど出来ない。

これがラッセ監督の生み出す人物像。
例外なく、人間は欲にかられ、闇を抱えながら生きている。自由に生きようとすると、かえって閉塞さが増すばかり。
自分のために生きる、なんて言葉はないのかも。誰かのために捧げた人生が、自分のための生き方だったと気付く。