うかりシネマ

蛇の道のうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

蛇の道(1998年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

小学生の娘をレイプされて殺された宮下は、塾講師の新島の協力のもと、犯人と思われるやくざを監禁する。
宮下には過去がありそうだが語られず、新島は何故宮下に協力するのか分からず、背景が分からないままなので常に不安なまま進んでいく。

娘を写すホームビデオを見せながら、外陰部と膣に裂傷があり、指を失い、全身に16箇所の刺し傷、死因は頭部への打撲で脳髄の三分の二を喪失、顔面は原型を留めておらず歯形で本人特定をしたことが、宮下の口から何度も語られる。
新聞記事か何かを読み上げるそれは映像で見せられるよりも強く印象に残り、毎回想像させられ、脚本を担当した高橋洋の『霊的ボリシェヴィキ』を彷彿とさせる。
基本はバイオレンス映画でありながら、監督の黒沢清がホラーを得意とすることもあり、ホラーのエッセンスが暴力性を引き立てている。

塾の授業は中身がないような、あるいは本作の全てを物語っているような、メタファーと言うには直裁すぎて可笑しい。
宮下と新島の思惑は文法的にストレートで分かりやすいが、作中に登場する三人の幼女についてはぼかされており、謎の明かし方もいい感じに閉じられる。
やくざを拉致する車内にも三人、地べたに落とされた飯を食うやくざ、その隣で杭を溶接する新島、その奥で銃を撃つ宮下という三人、そしてラストで運ばれてくる三人と、「三人」を使うカットが印象深い。

『CURE』では二人の攻防を目に見えない形で描いたが、本作の宮下と新島の関係性もそれに劣らぬものだった。