Siesta

蛇の道のSiestaのネタバレレビュー・内容・結末

蛇の道(1998年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

俳優・哀川翔の凄さを初めて知る 怪優なのにカリスマ性がある佇まい 香川照之も怪優なのだが、今作は役もあってか香川照之が小物に見える 今やカブトムシのおじさんとカマキリのおじさんよ リスペクト込めて言うけれど
シームレスに乾いた雰囲気でスタンガンで気絶させる雰囲気がめちゃくちゃ良い キュアとも通じる ビデオで娘の死因を淡々と話す
そこでの宮下のイキリの小物感
老若男女のいる謎の教室、数式 空間が裏返って時間が逆に流れることになるという意味深なセリフ この謎の教室の雰囲気は後年の岸辺の旅とも似ている気がする
大きい方だヨォと嘆願し、数日後には髪洗ったり飲んだりして適応してるの笑う ご飯を綺麗に盛り付けて目の前で床にこぼすのも性格悪過ぎて最高 それから黒沢清って、非現実的空間なのにロングショットでその作品のためにあるとしか思えない動線を映す気持ち良さあるよなぁと思う
銃を撃つ宮下、半田付けする新島、床のメシを喰らう大槻が同じ構図に収まってるのマジで普通とかけ離れたカットで痺れる
檜山を気絶させて袋に入れて引きずる この絶妙な滑稽さ 装具をつけた謎の女、コメットさんというのもキャラ立ちしている
宮下とヤクザたちのつながりが匂わされ、何かしたら仕事の手伝いをしていたのだろうと分かってくるのも上手い あと、鎖に繋がれた檜山に敬語使うの笑う
謎の数式は何なのか 復讐の方程式?みんな被害者たち?その集会?とか考えてしまう 少女のヒントで、あぁ、となり、世紀の発見のようにみんなが集合して来る そこから新島の裏工作が始まる 捉えた2人のヤクザに別の犯人を仕立て上げてお前らは逃げろ、と これが少女のヒントで導いた方程式なのかなとか
窓の外は白という黒沢清の車内は非現実空間という演出はやっぱりこの歪みがクセになる 曲がりくねった道はまさに蛇の道
殺し合いをさせ、大槻のところへ有賀の居所を知るために行くと、監禁された有賀がいて、有賀には別人のふりをさせるというこのライド感
そして、コメットさんを誘き出す 1人用の手術台、ビデオカメラ ここで娘も撮影されたんだろ、と 大量のビデオ ナレーション
俺の娘だ、ここで殺された、と この世紀末な雰囲気満載のテレビのオカルト感がまさに“激ヤバ”だなと コメットさん殺害シーンも凄い ゆっくり首から血を吹き出して死ぬという“見せ物”的な殺しの見せ方 檜山があいつは俺がいないとダメだからな、というセリフがあって、あの殺し方ってなると、コメットさんがあの殺しのビデオを欲していた、作らせていた人だったのかなぁと
しかし、ここで終わらず、宮下も拘束され、娘の殺されたビデオを見せつけられるという復讐 宮下はビデオ販売を請け負っていて、それで中身を知らなかったと言う あんたが1番嫌いだ、と SAWのラストを想起する お前が1番悪だ、と あと、弟子の濱口竜介の悪は存在しない 悪は存在しないのラストを説明すると、今作に近いのでは?と思ってしまう 片方は“同族”と思っていて、片方は違う、というか それから、オールドボーイ
あんたも興味あんの?と出会に遡り、哀川翔のラストの表情で締め括られる やっぱり、彼らは別の人間か、と 今作はセルフリメイクによって数十年越しに脚光を浴びて配信で見られるまでになったけれど、長らく眠っていたなんてあまりに勿体ない 監督も絶賛する通り、その後の有名作に先んじている脚本だと思う 演出も世紀末の黒沢清だからこそ生み出された奇跡的な空気感が紛れなくある 今作もまたキュア、カリスマ同様に、黒沢清の世紀末の異常傑作だと思う
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