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山の郵便配達のkojikojiのレビュー・感想・評価

山の郵便配達(1999年製作の映画)
3.8
「題名」「ジャケ写」のイメージ通りの素朴で暖かな物語でした。
期待を全く裏切ない傑作です。

1980年代初頭の中国の山間地帯。 
長年、この山間部の郵便配達をしてきた男は、足を痛め、息子に仕事を譲ることにしました。
息子が初めての配達に行く日、男は自分の最後の仕事として息子の配達に付き合うことにします。
配達と言っても、山間部を2泊3日歩いて集配する過酷な仕事なのです。

この二人の道連れは「次男坊」という犬です。
この犬が実に見事な演技をします。配達に出かける当日、まずこの犬の演技に目を引かれます。実際に主人公たちに相当慣れ親しんでおかなければ、あの演技は引き出せないでしょう。どんなふうにして撮ったのでしょう?これは知りたいところです。

二人と一匹のこの山歩きは一種のロードムービーと言えるでしょう。ただロードムービーと言っても定番の山あり谷ありのドラマではありません。ちょっとした波乱はありますし、恋心とまでは行かないまでも実に淡いふれあいもあります。(この淡い思いは楽しみにしてもいいぐらい上手い演出だと思います。)
もちろん彼等が歩く山道は山あり谷ありなんですが😅

息子は父と村人達の絆に触れて、自分と父の関係、母との関係に思いを巡らせます。
一方、父は父でまさに自分の定年退職の日だけに自分の人生を振り返ることになります。この二つの思いが重なり、交錯しながらいつしか父と息子の心が暖かく通じ合い、息子は父の仕事に対する思いを理解することになります。
集配から帰った翌日、再び黙々と出かけて行く息子の姿にそれを感じざるを得ません。

※雑談
昨年観た「小さき麦の花」にしても、本作にしても、中国人の心の根底にはこんな暖かいものが流れているのに、何故中国共産党は自らの利権ばかりを優先させるような政治しかできないのでしょうか?不思議でなりません。芸術、文化はほんと素晴らしいのに。
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