わたがし

嫌われ松子の一生のわたがしのレビュー・感想・評価

嫌われ松子の一生(2006年製作の映画)
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 何回も繰り返し観てきたオールタイムベストの1本。久しぶりにじっくり観返した。編集、カメラワーク、ルック、血肉になりすぎてるのに何回観ても飽きずに観入ってしまう。
『下妻物語』は語る視点こそCM的だけどストーリーはちゃんと王道で変化球青春映画という括りになるんだろうけど、この映画はその「CM的な視点」そのものがストーリーの核になっていて、言葉を選ばずに言うと「人生コマーシャル」みたいな2時間だと思う。
 自分はコマーシャルを作ったことがないけど、コマーシャルという映像を作る際の「短時間でいかに効果的に商品の良さを魅せるか」という狙いに対して生まれる定点視点(どれぐらい対象物に興味を持って近寄るか、あるいは離れるか)みたいなもので生身の人間の一生を撮り切る、という試みをしているんだと思う。凄まじい、ある意味で反モラルの極致みたいなことをしている映画。
 これを観た観客は商品を買うか買わないか(松子は果たして不幸だったのか幸せだったのか)考える。映画史の文脈ではいまだにCMを下に見るようなあれがあるけど、映画とCMの決定的な違いって何なんだとあらためて考えた。昔どっかのインタビューで中島監督が「ストーリーがないと誰も観ないからストーリーをやっているだけで、やらなくていいなら2時間ストーリーのない映画を撮りたい」と言っていたのを思い出してまたモヤモヤする。ストーリーって、人生って何なんでしょうね
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