タマル

武士道残酷物語のタマルのレビュー・感想・評価

武士道残酷物語(1963年製作の映画)
4.6
映画時代劇が急激に廃れていく60年代。華やかなりし量産型東映時代劇はなりを潜め、『用心棒』以降の残酷時代劇に東映ものった。

まぁどこの経済の入門書にも、「資本主義」なる概念は封建制の呪縛から人々を解き放し、未来には自由な経済活動による市民社会の実現を可能にすると考えられた等の記載があると思います。本作はまさにその封建時代を主に扱う話。そして、「封建時代」なる体制からは我々はなお解き放たれていないことを示唆しています。そもそも現代に至るまでに、日本式家族型経営の企業形態があり、「国家」なるものが形成され、固着し、イデオロギーとして機能していく戦前のレジームがあり、その前にまごうことなき封建制による純然たる階級社会があった。これも言われすぎてベタだけど、この一連の変革はただ一度として階級闘争という形で成し遂げられた試しがなく、なんとなく体制を持ち越したまま、変わっていってしまった歴史があります。確かに、90年代以降の家族型企業形態の完全崩壊と新自由主義路線へのシフト、そして高度情報化社会の到来によって、「会社」なる一般的指針がなくなってしまった感があり、同一に考えるのは危険ですが、恐らくハイパーリアルをより加速させる情報化社会と本作に描かれた日本の系譜的な価値規範は、多層的に同時進行の形で存在していると考えるべきでしょう。本作の問題意識は、現代の私たちにとっては近くて遠い話であり、遠くて近い話なのです。

つーか、鈴の音耳残るわぁ。
めっちゃ怖いんだけど。おじいちゃんのせいよくって何であんなおぞましいんだろうね?
藤ちゃんがレイプされるシーンは何となく『人間失格』を連想しました。
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