タマル

シン・ウルトラマンのタマルのレビュー・感想・評価

シン・ウルトラマン(2022年製作の映画)
3.8
『シン・ウルトラマン』観た。
 初代マンが人間時に「隊員」だから、本作マンも「禍特隊メンバー」にしたんだろうが、そこが大きな欠点になっている。主人公を政府と近い場所に置いたせいで、映画が政府間の思惑や異星人の陰謀といった無謀なほど大きな話に流れていってしまう。こういう大きな話を、2時間尺の映画にまとめようとすると、大変キツイのだ。物語を貫くワンテーマ、例えば「隕石が降ってくる」ぐらい単純な一本の筋でないと、複雑な事態の進行を描くことに一杯一杯で、個人の描写や成長や葛藤といった内面的魅力を盛り込む事が難しくなる。
 本作もその問題を抱えてしまった。異星人パートが始まるとvs怪獣バトルの側面が完全に消失。意味不明なまま人々の生活が無慈悲に踏みにじられるといった怪獣モノ特有の不合理性が消える。また、異星人さんと国家ガー人類ガーと揉めているせいで、各キャラクターたち(主に禍特隊)の掘り下げまで全く手が回らない。大切な仲間たちと飲み会に行って、絆を深めるヒマもないのである。おかげで、一番興味深い、愛すべきキャラクターが、一緒に居酒屋で飲んだメフィラスさん(山本耕史)になってしまうという異常事態に。「人間愛」で決着する話なのに、人間とは仕事の付き合いしかないなんて寂しすぎるだろ!主人公が民間人ならもっと人間との交流も描きやすかっただろうに、設定が足を引っ張り、人間ドラマがあまりに浅薄になってしまっている。
 個人的には人間ドラマなんかどうでもいいから、もっともっと怪獣に出てきて欲しかった。冒頭の、ネロンガと「銀色の巨人」が向かい合うワンカットはワクワクしたし、こいつの造形ビミョーだなあと思わせといて頭パカッ!なガボラも良かった。ああいうのを期待して観に行っているのに、序盤の30分で怪獣はもういいよね?とばかりに切り上げられたら堪らない。異星人パート、特に中盤のザラブ星人なんて、戦闘盛り上がらないしストーリー上の必然性も薄いしで、ただの味替え要因でしかないんだから、もっとゴモラとかレッドキングとか出せってんだ!ラストの黒いアイツに対するアレコレも、もっとしっかり描いて欲しかったです。

 結論、一般人と一体化しておけば怪獣に対する人間ドラマも描けたし、人間愛に目覚めるきっかけも描けたのに残念だなあと思うけれどそれでもやっぱり劇場で見る怪獣バトルは最高だ!
デッカい人とデッカい獣が戦ってるんだから、デッカい画面で見るっきゃない!! オススメです。
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