タマル

奇跡の海のタマルのレビュー・感想・評価

奇跡の海(1996年製作の映画)
4.0
 「信念や信仰は心の内にある」
オーディオでのトリアー監督のコメントが全てだと思います。どれだけ悲惨な人生に見えたとしても、自分の人生を肯定し得るか否かは最終的に己の信念次第。それが、「客観的」(そのための手持ちカメラか?)には妄想にしか見えない代物に過ぎないとしても、関係ない。客観は自分の人生に何一つ救いをもたらさないから。トリアー監督はそんな映画ばっかり撮ってる気がしますね。そして、私はそんな映画が大好きです。
 最後のチャプターの擬似絵画で流れるボウイの「Life on Mars? 」が印象的でした。現実に居場所のない少女が、この世界とは比べ物にならないほど素晴らしい生活があるんじゃないか?と火星に想いを馳せる曲。本作のラストシーンと重なる、非常にロマンチックな選曲だなーと。
 ただ、本作の「妄想」のネタが宗教だったもんで、後半部分は共感できない点もちらほらでてきました。特にラスト。関係ない奴らにも聞こえちゃうんだ!みたいな。例えばヤンにだけ聞こえていて他の仲間たちは怪訝そうに見てるとか、それぐらいのバランスで良かった気がします。こうもはっきり現象としての「奇跡」を描かれると、
生きてるうちになんかやってやれよ!
命捧げないとやってくれないのか神様!
みたいな変な怒りが湧いてきてしまいます。
キリスト教文脈で見ればわかる特殊な意味が込められてるのかも知れませんが、映画全体のトーンからすれば甘すぎて、歪な印象を受けてしまいました。
ラース・フォン・トリアー作品が甘すぎってのも変な話ですが(笑)
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