ハレルヤ

カティンの森のハレルヤのレビュー・感想・評価

カティンの森(2007年製作の映画)
4.1
第二次世界大戦時、15000人ものポーランド将校や一般人が大量に虐殺された「カティンの森事件」をテーマとした戦争映画。

西からドイツ、東からソ連と両側から攻め込まれ、悲惨な運命を辿ったポーランド。その軍人たちもソ連の捕虜とされ、何処かへと連行される。その彼らの帰りを待つ家族。様々な人間模様が描かれます。

天気は晴れていても寒々しく、虚しさが感じられる作風が最初から最後まで貫かれ、明るさは一片も見られません。

戦争映画ながらも戦闘シーンは皆無に等しいですが、終盤で展開される一連の事件の様子は、そこらの映画の戦闘シーンを見るより遥かにショッキング。

次々と人が流れ作業のように撃ち殺されていき、死体はブルドーザーで埋められる。派手さも余計な演出も何も無し。車から降ろされた人々が何の抵抗も出来ずにただ殺されていく。これが現実というのを突きつけられます。

ドラマチックな場面も全く無いし、映画ではなくドキュメンタリーを見ているよう。監督であるアンジェイ・ワイダ自身も父親をこの事件で亡くしている経緯もあってか、静かな映画ながらもどこか底知れぬ熱量を感じました。

1990年になって、ようやくこの事件はソ連によるものと認められたという事実。劇中でもありましたが、この事件をドイツが起こしたとして隠蔽しようとしたソ連の卑劣さに怒りが沸きます。

戦争はどこの国が悪いという訳ではなく、どこも悪い。そして一番犠牲になるのは決まって国民。そういった事実を改めて認識しました。見終わったあとは落ち込みますし、何度も見たいと思える映画ではありませんが、一見の価値は間違いなくあります。
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