義民伝兵衛と蝉時雨

問いかける焦土の義民伝兵衛と蝉時雨のレビュー・感想・評価

問いかける焦土(1992年製作の映画)
3.7
『戦争』というものの普遍性が虚実を織り交ぜて炙り出されている映像作品。現実と創作が入り混じった独特な形容で『闘争本能』という人間とは切っても切り離せない性が見事に写実されていると感じた。そしてその本能の残虐性や不変性を改めて実感することが出来るのだが、一般論では悪とされがちなその本能を決して悪とはせずに、寧ろ人間の一種の美しさとして受け入れ、人間を通俗的で一般向きに美化しなくとも人間を肯定することの出来る力強さや厳格さの中に、ヘルツォーク監督の人間愛・人類愛の深さを感じ取ることが出来た。音楽と調和する幻想的な映像美や過酷なロケ撮影はやはりヘルツォーク作品の真骨頂を観ているという感覚が存分にする。本作もヘルツォーク監督にしか描けないだろう情景であり、観る価値が十二分。