三樹夫

悲しい色やねんの三樹夫のレビュー・感想・評価

悲しい色やねん(1988年製作の映画)
2.9
ヤクザの組長の息子で銀行マンの中村トオルが脱サラして大阪でカジノ経営に乗り出す。しかし大阪には対立する組があってそこには親友の高嶋兄がいた。大阪はふとしたきっかけで一触即発の緊張状態になるが、さらに大病院の娘藤谷美和子が現れたことで事態は混乱の一途をたどる。

映画が始まっていきなり中村トオルと石田ゆり子の飛び抜けて下手くそな大阪弁で腰を抜いてくる。この映画の大阪弁は本当にダサい。とどめを刺すようにディーラー(森尾由美)の「それまでー」がとんでもなくダサい。邦画がよくやってるダサいことはしないと『ときめきに死す』の時にはやらなかったことを全部やっているような邦画特有のダサさがこの映画はずっと続く。しかしそこに森田芳光のクールネスな演出を混ぜ込んできてもはやクソ映画なのかどうかの判別も難しい変な映画として出来上がった。

上田正樹の「悲しい色やね」がテーマソングとして流れるが、1988年のバブル真っただ中に何で「悲しい色やね」をフィーチャーしてるの?と色々謎が多い。公開当時だと「悲しい色やね」は完全に時代遅れだと思うが、何でこれを取り上げたんだろ。
映画の内容よりもなんでこの映画が作られたのかが一番興味ある。押しつけの企画かと思いきや脚本書いているのは森田芳光だしで、何でこれ作ったの感が強い。ある程度パッケージングされた企画に脚本書いたり演出頑張ってみたけど、最終的にできたのは変なものという感じなのかな。藤谷美和子、小林薫、江波杏子、イッセー尾形、高島忠夫以外は色々放棄しているというか最初っから諦めて撮ってる感すら漂っている。
小林薫と江波杏子関連のシーン、藤谷美和子がビンで頭どつかれるシーン、殺し屋が襲撃してくるシーン、銃弾を食らって『ときめきに死す』のラストみたいな血の流れ方、藤谷美和子の何このキャラという頭おかしい奴は良かった。ただ後は全部ダサい。

中村トオルと高嶋兄の関係、仲村トオルと石田ゆり子の関係は深堀りもなく、いつの間にかそっちのけになる。
劇中の大阪弁がイントネーションから何からほとんど芯を食っていない上に、仲村トオルと石田ゆり子は演技力が大阪弁で喋るに達しておらず惨憺たる出来の大阪弁になっている。~でんがな、~だすみたいなもはや架空大阪弁を使用しても役者の演技力がしっかりしていれば『実録外伝 大阪電撃作戦』みたいに普通に観れるので、映画における大阪弁は使用する役者の演技力が一番大事なのかなと思った。
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