泣ける。生後間もない他人の赤ん坊を連れ去って偽りの母子として逃亡生活した4年の歳月、1番罪深いはずのこの女にどんどん感情移入してしまうのは何故だろう。不倫相手の子を身籠り離婚するとの言葉を信じて堕したが先方の妻に罵倒され心に傷を負った女、決っして復讐心でしたことでない衝動的な誘拐も、目の前の新しい生命に無償の愛おしさを感じる母性が理性を越えてしまう。１番の被害者は何も知らずに限りなく優しい母と信じていた人の逮捕で突然引き離され、見ず知らずの本当の両親に引き渡される幼女。親とも馴染めず大人になっても一人暮らしで昔のことは触りたくないと閉じこもる日々。過去と現在をオーバーラップさせながら引き離された逃亡最後の地小豆島へ誘われていき、逮捕直前に撮った記念写真館での偽りの母に慈しみ抱かれた古いネガフィルムに出合う。親の虐待や育児放棄の暗いニュースに胸潰れる思いがする昨今、罪とはいえこんなに１日１日一緒にいることを無上の幸せと思って子に接している姿を見せられると勝手に許してしまう。
