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ダンス・ウィズ・ウルブズのKuutaのレビュー・感想・評価

ダンス・ウィズ・ウルブズ(1990年製作の映画)
3.0
午前10時の映画祭にて。アラビアのロレンスと同じ白人酋長ものってことなんだろうが、あっちが傑作すぎたな…。ほとんど楽しめなかった。

自分の居場所を見失った軍人ジョン(ケビン・コスナー)がフロンティアで暮らし始める(地平線を旅立つ様をドア枠で見送る、西部劇お決まりのショット)。そこで「裸一貫」からスー族と交流し、アイデンティティを再発見していく。一度カタルシスを得るものの、軍の横暴に苦しめられる。

ロレンスとほぼ同じ展開だが、あっちが「分かり合えたと喜び、欺瞞に気づき絶望する」話だったのに対し、今作では、ジョンとスー族は相互理解を実際に確立し、ジョンは力を取り戻したように見える。

物語的なハードルは今作の方が高いはずだが、随分あっさり進むなと感じてしまった。「交換」「言葉」「戦い」で、トントン拍子で絆を深めていく。
(余談だが異人種とのコミュニケーションのきっかけが「女性の交換」なのは、人類学の本で昔読んだ気がする)

この物足りなさは、今作の語り手がジョンの「日誌」である点に集約されるだろう。この映画はジョンの願望の反映で出来ている。

彼はスー族とポーニー族の戦いへの参加が許されず、外部に留め置かれる。彼は白人性を保ったままスー族と同化する、矛盾した関係を強めていく。そして擬似的な「敵」としてポーニー族やバッファローを位置付け、「戦争のできない白人」というトラウマの解消に成功する。

ここで、本来のフロンティアの血生臭さの中心にあるはずの「白人vsネイティブアメリカン」の構図は回避されている。だから彼の矛盾は表面化しない。

結局この映画の主題は、異なる文化が衝突するフロンティアではなく、白人ヒーローに回帰しながらスー族としても認められるというジョンの理想、「擬似的なフロンティア」の映像化にあったと言える。

それが映画のラストにおいて、他者の介入によってあっさりと破綻するのは宿命でもあるだろう。だから、彼はスー族を救えない。

で、それだけならフィクションとしてぎりぎり許容範囲に思えるのだけど、スー族に米国人っぽく会話をさせていたのは、ちょっと受け入れ難い。彼らの文化を矮小化しているように見えた。彼らがどんな思想を持ち、何に価値を置いているのか、もっと「他者」を真面目に描いて欲しかった。そこもジョンの日誌で塗りつぶすのかよ、と。

良かったところも何点か。
ジョンの内的葛藤の象徴として狼が登場する。スー族との生活に馴染むにつれて、狼とのコミュニケーションも安定していく。ここの見せ方は上手かった。「ヒックとドラゴン」にも似た場面があったなと思った。

バッファローの狩りシーンも文句なしで素晴らしい。両手離して馬乗って銃を撃ってるケビンコスナー。隠し砦の三船ばりのアクションだった。

バッファローの足音や銃声など、音響もとても良い。一方で、音楽の使い方はやや節操なく感じた。冒頭の野戦病院で音楽鳴りっぱなしだった時点で嫌な予感はしたが…。全体に垂れ流し感が強く、メリハリが弱いように感じた。

ケビンコスナーが自腹を切ってまで復活させた西部劇。「ネイティブアメリカンへのフラットな目線が評価」され、アカデミー賞7部門を受賞している。努力賞って事で監督賞や脚色賞は分かるけど…作品賞取るかこれ?60点。
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