安堵霊タラコフスキー

穴の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

(1960年製作の映画)
4.9
ジャック・ベッケルの遺作にして最高傑作。

ジャック・ベッケル版抵抗といった趣の映画で、序盤の脱獄が始まる前から演出が毎度の如く流麗だったのだけど、題名にある穴を掘るシーンから緊張感が途轍もなく、見入っている内に2時間強あっという間に過ぎ去ってしまっていた。

穴掘るときに音鳴りすぎで気付かれそうというツッコミ所も無くはなかったけれど、そんなのが途中から気にならないくらいのめり込める内容になって、しかも殆ど脱獄風景のみでその内容を構成しているのが見事で、これにはドラマより描写を重視する自分も大いに満足できた。

先に作られたブレッソンの抵抗も傑作だが、後発のこちらもそれに引けを取らない程の傑作に仕上がっていた。

しかしカラトーゾフの送られなかった手紙といい、こんな完成度が高くてもカンヌで無冠に終わったのは、甘い生活や処女の泉等他の作品もレベルが高かったからではあるけれども、それでも惜しいと思えてしまう。(これがベッケルの遺作になってしまったという意味でも)