たかちゃん

むかしの歌のたかちゃんのレビュー・感想・評価

むかしの歌(1939年製作の映画)
4.0
『むかしの歌』
大阪船場の商店の娘、花井蘭子。彼女は恵まれた暮らしをしているが、産みの母親は別にいる。助けた娘の母親こそ実の母だった。そして没落した商店、彼女は花街に向かう人力車に。無言の母との別れ。そして無理しての笑顔のラストシーン。風車、道頓堀川の流れ。時に清く、また破れ傘が流れているときも。心象風景の河の流れ。お人好しの許嫁は守護神の役割があるが、途中で見放してしまうのが哀れ。

『あさぎり軍歌』
『むさしの歌』と同時代だが、薩長を愚かな悪役として描いている。人の話を聞かない。相手を味方にするために恫喝、暴力を使う。坂東は親兄弟から疎まれながらも薩長、彰義隊に加わらない。板挟みとなる花井蘭子は自死。ラスト、坂東が「やがて外国の敵と戦う日も来るだろう」と呟く戦時下の作品だが、軍部から「傍観者的作品」と断じられたそうな。

『天明怪捕物 梟』
ワル与力を怪盗、善玉与力と岡っ引きが成敗するのだが、このワル与力が嫌がる女を恫喝して手に入れようとする。そのキャラクターは石井輝男の『異常性愛記録ハレンチ』の若杉英二と双璧を為す粘っこさ。殺陣廻りはしっかりしている。本作は監督名が欠落しており、石田民三との文献もある一方、石田民三のフィルモグラフィには入っていない文献が多い。

『おせん』
本作は、石田民三のサイレント期の代表作と言われているが、発見された17分の断片から伺うしかない。誤解から役者の浮世絵を描いてもらえない。それを知ったおせんが、泣いて頼み込むシーン。三木茂の撮影前に精密なコンテを作っていたという。
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