Omizu

ブラックブックのOmizuのレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.5
【第63回ヴェネツィア映画祭 ヤング・シネマ賞】
『氷の微笑』ポール・ヴァーホーヴェン監督作品。オランダ映画史上最大の予算をかけた戦争大作で、興行的にも批評的にも大成功をおさめた。ヴェネツィア映画祭コンペに出品され、アカデミー外国語映画賞ショートリストにも選出された。

素晴らしかった。こんなにも映画に入り込んだのは久しぶりだったかもしれない。二転三転する読めない展開、エログロ全開の描写、主演女優のやりきりっぷり、皮肉の効いた深いラストシーン。全てが高いレベルにある。

ヴァーホーヴェンは『氷の微笑』くらいしか観ていないかな?たぶん。それでも「ヴァーホーヴェン節」と言いたくなるくらい作家性が感じられる作品。

裏切り者は誰か?というサスペンスフルな主軸だけでなく人間というものの二面性、そしてもちろん戦争の愚かさにも及んでいく深い演出がお見事としか言いようがない。

ラスト、もう戦慄するしかない終わり方。一つの戦争は終わっても次々と争いは生れていく。戦争に、人の愚かさに終わりはないのだ。

観ていて辛いところのある作品で、軽い気持ちで観るのはオススメしない。ある程度覚悟して挑むべき映画。しかし一旦観てしまえばもう止まらない。二時間半という長さを全く感じさせない。ポール・ヴァーホーヴェン恐るべし。後世に残る傑作でしょうこれは。
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