又野克明

ブラックブックの又野克明のレビュー・感想・評価

ブラックブック(2006年製作の映画)
4.4
「ショーガール」の時もそうであったが、ヴァーホーヴェン監督の作品はセックスを肯定しているところがあります。セックスに倫理を持ち込むことは以ての外で、セックスに善も悪もない、なんなら素晴らしいことであると言っているようです。

それをもう少し説明します。電車の中で美人がいると、際立って注目してしまいます。それが顔の悪い人なら、同じようになるでしょうか。ユダヤ人スパイであるエリスは、ナチス軍のムンツェ大尉の優しさに惚れ込んでしまい、好きになります。エリスもムンツェ大尉もお互い顔は美男美女です。

つまり、この作品でもこの監督は「(セックスの)できる相手と、やりたい時にやりたいようにやればよい」というふうに描きます。それは非常に重要です。興奮すれば、合意のもとに、やるのが、人間の自然なセックスの在り方でもあるのではないでしょうか。

人間が、何がどういうふうに邪魔をして、好きになってはいけないのか。どういう人種を、どういう肌の人を、セックスの妨げになるのか。非常に難しくて、且つ大事な問題です。エリスはムンツェ大尉が好きで、セックスをした。どこもおかしくはありません。そして、ムンツェ大尉も、(たぶん)そのエリスの美貌から、彼女がユダヤ人であるのにも関わらず、恋に落ちるのです。

それが僕個人的にはこの『ブラックブック』と言う作品の、非常に素晴らしい点であるかのように思えました。以上です。
又野克明

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