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レインマンのEyesworthのレビュー・感想・評価

レインマン(1988年製作の映画)
4.9
【レインマンからメインマンへ】

アカデミー作品賞を受賞したバリー・レヴィンソン監督、トム・クルーズ&ダスティン・ホフマン共演のロードムービー。

〈あらすじ〉
ロサンゼルスの高級外車ディーラーの経営をしているチャーリー・バビット(トム・クルーズ)は、事業でトラブルが続き不振にあえいでいた。そんな彼に疎遠だった父の訃報があり、彼女スザンナ(ヴァレリア・ゴリノ)と共にシンシナティへと帰郷する。遺言状を開いてみると、チャーリーが受け取る遺産は、クラシックカーのビュイックとバラの木だけで、残りの300万ドルは信託預金として管財人ブルーナー(ジェラルド・R・モーレン)に委ねられることを知る。納得がいかないチャーリーは、信託銀行で管財人について聞き出し、ウォールブルックという名前の施設を訪れる。施設でチャーリーは、これまで存在を知らなかった兄レイモンド(ダスティン・ホフマン)と出会う。レイモンドは極度の自閉症を抱えており感情の理解や表現がうまくできないため、毎日同じルーティーンを繰り返す生活をしており、そこから逸脱するのが何よりも耐え難い。そのため外界に出たことは殆ど無いが、レイモンドが相続した遺産の半分を自分の物にしようと考えるチャーリーは、ブルーナーに無断でレイモンドを半誘拐的に連れ出し、ロサンゼルスへと戻ろうとする。しかし、飛行機が恐ろしいレイモンドのため仕方なく車で帰ることに。その一週間の旅路で、二人は過去の記憶を埋め合わせるかのように兄弟の絆を深めていく…。

〈所感〉
野心と自信に溢れた気性の荒いチャーリーを演じたトム・クルーズがとにかくイケメンで彼を拝むのに2時間は短いくらいに感じる。トップガンでアクション俳優への道が開けた後のこの人情味あふれるロードムービーなので彼の振り幅が試されたと思うが流石のスター性である。そして自閉症(サヴァン症候群)のレイモンドを演じたダスティン・ホフマンはこの映画のモデルとなったキム・ピークに実際に会い彼の仕草を演技に取り入れるなどして、役作りに励んだという。そのため非常に障害者特有のパターン化された言語や予想外の出来事への過剰な反応などがリアリスティックで、初めてダスティン・ホフマンを見た人は健常者だと感じさせないかもしれない。そのくらい素晴らしい演技で、『クレイマークレイマー』以来8年振りにオスカーを手にしたのも納得だ。
映画のタイトルである「レインマン」というのは、主人公チャーリーが子供の頃に遊んでくれた男の人を指していることがわかる。チャーリーの脳裏にいつしか雨の日になると歌を歌ってくれた"レインマン"として強く記憶に刻まれてたのだ。そして、年月を経てチャーリーはレイモンドと再び出会い、彼が弟のために歌を歌って楽しませていた話を聞き、レインマンは実は兄の"レイモンド"だということに気付く。二人は本来は手にするはずだった兄弟の時間を埋め合わせるように一週間車内でホテルでレストランで共にして、親睦を深めていく。その過程でチャーリーはレイモンドの類稀ざる記憶力、計算力に気付き、カジノで有効に利用しようとする。出禁になってしまったが、このカジノでの二人の楽しそうな姿が微笑ましい。チャーリーは、医者の見立てとは違い兄レイモンドには感情表現も判断もできることを確信していく。そして、長く過ごしてきた安心安全な病院に戻る決断を自ら選択してもらう。レイモンドも普段の行動からはわからないが、弟チャーリーの考えを信頼し、心の底では愛しているのだとわかる。最後のホットケーキのシロップのシーンは印象的だ。それでもお互い帰る場所へと戻っていく。
あの頃の遠くにいたレインマンは、今こうしてメインマン(親友)となって親密な距離を取り戻していく。切なく温かく愛しい大人の兄弟愛の物語は忘れた何かを思い出させてくれる。二人の名優がお互いの可能性を信じきって持て余すことなく新たな兄弟像を演じて見せた名作である。
車から降りたチャーリーが「パンツはパンツだろ!!」とバイきんぐ小峠ばりに路上で叫んでいるシーンが大好き。。
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