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八つ墓村のmarohideのレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
4.0
 夕暮れを背景に小高い丘から村を見下ろす8人の落ち武者のシルエットと舞台となる村の全景、そこへ真っ赤な文字でタイトルが入り、耳に残るテーマが流れ始める。
 この冒頭のシーンだけでも観る価値があるというもの。

 とにかくこの映画は芥川也寸志の音楽がよい。たっぷりとした甘美なメロディは不気味でおどろおどろしい映像を抜群に引き立てている。メインテーマをアレンジして繰り返し使用しているのも心憎い点。観たあと数日はこの曲が頭から離れないだろう。

 三十二人殺しのシーンは圧巻。インターネットなどで切り取られた例の衣装などを見るとかなりトンチキに思えるが、実際に映画内で見るとその鬼気迫る迫力に圧倒される。
 桜が咲き乱れる中血飛沫をあげながら疾走する姿などは美しささえあり、演じた山崎努の表情と相まって強烈に印象に残った。

 日本の村落を舞台とした怪奇、オカルト、ミステリーの原点の一つであり、ドラマやゲーム、漫画などざっと考えただけでもパロディやアレンジがいくらでも思い出されるほど。共通認識の原型を知るという点でも興味深い作品であった。
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