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⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎のmarohideのレビュー・感想・評価

⻤太郎誕生 ゲゲゲの謎(2023年製作の映画)
3.5
ノーマークだった鬼太郎の映画だったが、横溝正史作品の世界観だという評判を目にして俄然興味がわき鑑賞。

良かった。評判通りしっかりと昭和の匂いがする。主人公の水木が特に良い。何がいいって、この人自身も良くも悪くもバリバリの昭和なの。この手合のキャラクターは、ここしばらく見なかった気がする。

好感が持てたのが、「怨みは簡単には消えない」という点が揺るがす、一切例外のないルールとして終始一貫していた点だ。一度怨みを持って死ねば怨霊となり、もはや美辞麗句による説得も命乞いも通用しない。その魂は長く苦しみ、なんの非もない小さな少年の魂ですら70年以上彷徨い続けることになる。この非情さが良かった。
終盤の村から襲われるシーンも良い。赤子を抱いた母親のような村人すら容赦なくやられる。八つ墓村のあのシーンを思い出した。

村人たちがある価値観から見ると極めて合理的なのも良かった。
悪役としての狂人はわけのわからぬ存在であるよりも、むしろ独自の規則に則った理詰めの存在であるほうが余程面白く恐ろしい。わけのわからぬ恐怖は、それこそ化物の領分なのでそちらに任せればよい。
その点、この映画の悪役である村人たちは道理の通じぬ合理の人間たちであった。

書籍炎上シーンはなかったが、書籍破壊シーンはあった。思いがけないめっけもんである。
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