風来坊

八つ墓村の風来坊のレビュー・感想・評価

八つ墓村(1977年製作の映画)
3.0
実は意外な人が金田一耕助を演じてたりするんですよね。この渥美清さんのバージョンは観た事無くてずっと観たいと思っていました。
この他は金田一耕助を演じた初代の片岡千恵蔵さん、高倉健さん、西田敏行さん中尾彬さんのバージョンも観た事が無くて観てみたい。

片岡千恵蔵さんのバージョンはフィルムが見つからないって話だったけど、「悪魔が来たりて笛を吹く」が70ぶりに去年見つかってクラウドファンディングで修復されたそう!

本作は野村芳太郎監督と脚本は橋本忍さん。撮影は川又昴さん、音楽は芥川也寸志さんという「砂の器」の製作スタッフだったんですね。
製作期間2年3ヶ月で製作費当時で7億円(現在だと約15億円)という超大作!
しかし、それを上回る松竹映画で歴代に残る配収だったそう。

当然ですけど萩原健一さんも大滝秀治さんも渥美清さんも小川眞由美さんも山崎努さんもみんな若い。
目当ての渥美さんの金田一耕助が登場するまで長い…。豊川悦司さんバージョンの「八つ墓村」を観たけど、こんなに登場が遅かったっけ?
なんかシレッと登場の渥美さんの金田一は麦わら帽子によれた開襟シャツという一風変わった格好。ただ…やっぱり寅さんが金田一耕助をやってみました感が強い(笑)

なんでも石坂浩二さんの金田一耕助でやっと原作準拠の着物姿になったそうで、その前はスポーツカーを運転したりジーンズ姿だったり破天荒な金田一耕助が多かったそう。
物語は仕方ないけど村の始まりなど説明部分に時間を取られている印象。
市川崑監督みたいにあまりおどろおどろしい感じではなく、なんかサッパリしているような雰囲気。

人の死に慣れた村という事なんだろうけれど、人の死に驚かないというか感情が薄い感じはよく出ていました。
八つ墓村といえば実際の事件の津山30人殺しをモチーフにしたあの場面な訳ですが、山崎努さんの迫力が凄まじい。
しかし…血の色が真っ赤ではなく朱色なのは狙った演出なのだろうか…。ドス黒い赤の方がもっと凄惨さが出た気がしますが…。

金田一が捜査のために各地を無言で旅するシーンは砂の器に似てました。
主人公は金田一じゃなくて辰弥な感じで金田一の影が薄い…。ただ山崎努さんのあのシーンの暴れっぷりに全てが喰われているような…。
金田一もなんか優秀に見えない感じで後手後手な感じでうーん…。
洞窟はよく出来ていて美術とロケハンが良い仕事している印象。

おどろおどろしい感じでガチガチの古典ミステリーにせず、人間ドラマのようにしたのは野村芳太郎監督らしいなと思いました。
多分、金田一が取っ付きやすい普通のおっさん風にしたのも人間臭さを出すための演出なんだろう。話も既に知ってしまっているからドキドキも無いんですが、あのキーワードの使い方などが上手かった。

小川眞由美さんの妖艶さも物語を盛り上げていました。終盤はやっとおどろおどろしい感じでアレは修羅になったという解釈で合っているのかな🤔
しかし…橋本忍さんの脚本にしてはちょっとシャープじゃないというか無駄が多い…120分以内には抑えられていたと思うのだけれど…。
悠長に村人たちに事件の真相を語る金田一って何だかなぁ…。
ただずっと渥美清さんバージョンは観たかったし、イケメンじゃない金田一もけっこう良いかも知れないと思いました。

まとめの一言
「強欲一族」
風来坊

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