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シンドラーのリストのtyapiokaのレビュー・感想・評価

シンドラーのリスト(1993年製作の映画)
3.7
日本のサラリーマンは殺されないだけでユダヤ人に次ぐ扱いを受けているように思えた。冷房の効かない満員電車、残業、パワハラ。シンドラーの下の方がホワイトに思える。しかし、そんなシンドラーも最初から聖人ではなく、徐々に心変わりしていく。最後、ユダヤ人のために涙を流すまでになるのには驚くし、悲しい。モノクロの中のカラーの使い方でシンドラーの変化を描いたのは、やや、あざといが上手い。直接的な残酷描写は最低限度で表現しておりながらも、しっかりと余白や数字、銃撃の光や、煙で死を描いていた。一番の悪役もどこか戦争のせいという空気をにおわせており、昨今のナチス=極悪の図式とは少しズレる。娯楽作でなく真面目な作品も描けるスピルバーグの幅広さに驚いたが、スピルバーグ節はそこまで感じなかった。しかし、女性たちがミスで運ばれてしまったり、優しさを見抜かれてシンドラーが処罰されるのではと緊張感の出し方は健在だったが、いつものスピルバーグ節を感じさせないからこそ、この場合はよかったのだと思う。シンドラーがユダヤ人を救うためにリストをつくり、ユダヤ人がシンドラーを救うために署名する。双方向なタイトルに思えた。また、モノクロなためか、小学生の頃、図書室の片隅で読んだホロコーストの写真資料を思い出した。
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