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オッペンハイマーのtyapiokaのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
3.0
爆発よりも興奮した人々の足を鳴らす轟音が怖く映る作品。最後にタイトルクレジット。映像的には爆発がクライマックスとなってしまうため、人間関係のゴタゴタ種明かしパートは、人間性が良くないと相応に罰が与えられるのだな、と至極当然のように思え、応援もスッキリもなかった。順序隔てて語るのではなく、ある種の失墜から始まることで、原爆開発は成功するのかという部分と並行して裏切り者は誰か、良心の呵責は起きるのか等が気になるポイントに置かれるが、個人的には一つは成功と分かりきっており、裏切り者は誰であっても驚きはなく、呵責は起きるだろうなと、物語としての期待感が低かった。唯一爆発を映像でどう見せるかは興味があり、実験の緊張感はさすがだったが、無音の綺麗さを多面的な角度と小さい火花で魅せてからの爆音の恐怖は割と普通の魅せ方におもえてしまった。ユーモアなしのシリアスで長時間見せてからの、世界を壊してしまった自覚エンドはある意味教科書的すぎる。評価された理由は何となく分かるけれど、好きではなかった映画。女関係の酷さや研究者周りの人間らしいゴタゴタに頭のいい人も結局は人間か、と思いつつ、天才たちの人間部分をもっとうまく描いた作品はあったように感じるため、この作品の意義は原爆を世界中が持ってしまったことの意味をもう一度問い直そう、という、日本人にとっては小さい頃から何度も刷り込まれている教育テーマを世界に投げかけられることかもしれない。
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