Tully

羊たちの沈黙のTullyのネタバレレビュー・内容・結末

羊たちの沈黙(1990年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ジョディ・フォスターの演技と、アンソニー・ホプキンスのあのやりとり。近づくのが怖いあのガラスの壁、ガラスの向こうにいるわけだ、その囚人がね。言葉をやりとりするので壁には穴が空いている、あの穴が、鉛筆一本通るんですよね。以前に鉛筆で目を突かれた人がいるという話を聞いたときに、近づきすぎてはいけないと、穏やかにしゃべるアンソニー・ホプキンス。その裏にある悪魔性というか残虐性というのを余計に感じる、あの怖さ。たった一枚のガラスの向こうにいて、距離をあけてしゃべる二人の、あの距離感のうまさ。そして彼にとってみれば、あんなところを出るのは簡単なんですね。いとも簡単。いつでも出られるんですよね。警察やら警備やらが走り回ったところでもって、まんまと逃げるのだけれども、顔中血を流して倒れていて、ワーッと思って見ると、実はそうではないという。あの、顔を、皮を剥いでしまうというね。血だらけでもって、誰だかわからない、それがまた怖い。最後に、明かりがない部屋に助けに行ったときに、ジョディ・フォスターは敵からは見えているんですが、彼女には向こう側は見えないんですよね。彼女はまだFBIでも使えるかどうか分からない、新米の若手の女性であるわけですよ。頭はいいんですが、まだまだプロではないわけで、半分学生のようなところがありますから。その彼女がですね、こう立ち向かっていく、危ない、怖い、えらい、というね。で、人質の方はというと若い女性は井戸の中のような深いところにいるわけですね。要するに、上でもって部屋で相対峙しているのに対し、肝心の人質がなんと井戸の底にいるというね、おもしろい組み合わせを、うまく使ってるんですよね。そして変質者が事件の本質を持っていて、あくまで主役のはずなのに、アンソニー・ホプキンスとジョディ・フォスターが絶対的な主役でもある。人形を作ったり女装したりとしているあの変質者の気味悪さが、うまい具合にいっしょに固まっている。「誰が主役だったの、あの映画は一体?ジョディ・フォスター?アンソニー・ホプキンス?それともあの変態の男?」なんですかね、分からないところなんですが、でも怖いんです。闇の向こうに消える、暗闇の中に。なにも言わない、言わずもがなですよね。怖さが伝わってくる。あのテンポの良さとか怖さなんてのは抜群ですよ。洗練されてましたね。最高です。
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