このレビューはネタバレを含みます
タイトルはもう何度も聞いたことがあった名作。それなのにここまでほとんど内容を知らずに初見できて良かった!
獄中の天才精神科医に捜査の助言を貰いに行くところから始まり、真相に迫ってゆく。
Dr.レクターは会話の進め方や条件の提示なんかを駆使して主人公クラリスの過去を引き出したり警官の隙をついたりする。話しているだけで底知れぬような他人を全て見透かしているような感じで、明らかにただ者ではない。絵画や音楽や自然を愛し、嘘の条件に心惹かれる様や羊を抱えたクラリスの絵を描く様に、人間味とは少しズレた不気味な魅力を感じさせる。常人には理解できない異常な殺人鬼は、あまりにも知性的で魅力的だ。
一方、今回追っている犯人の動機のキーワードは「切望」。猟奇殺人から予想される快楽や趣味ではなく、本人のルーツに関わる部分からの犯行。女性になりたい願望を拗らせた犯人が化粧をしながら鏡の前で独り言を呟くシーンはどこか切ない。変身願望に囚われ、鏡の前で蝶や蛾かのように衣装を広げるのが印象的。そうしているうちに被害者の女に人質(犬質?)に取られる小太りのプードル。巻き込まれて可哀想だけど可愛い。ポテポテ歩いているところはちょっと笑った。
FBI捜査官が突き止めた家、クラリスが1人で捜査に行った家、犯人の家、それぞれでチャイムが同時に鳴るところが巧妙!そっちか…!という絶望。ここからの緊張感は本当に手が冷たくなるほど。暗視ゴーグルで“見られている”構図。捕獲は意外とあっけなく。それはそれで良かったけど。
対して、パーティムードのクラリスに一言だけ告げるためにかかってきた電話は、どこかで“見られている”ようなタイミング。相手が何枚も上手だと感じさせてここもまた別のベクトルで身体が冷える感覚。
目の前の悲惨な事件と、更に恐ろしい異常者との対峙が常に上手く対比されていて面白かった。ハンニバル・レクターの魅力に心惹かれる作品。続編も観なきゃいけなくなった、、